原修太

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

「打ち上げの時には悔しい気持ちがどこかにありました」

16日に行われた千葉ジェッツvs栃木ブレックスは、尻上がりに調子を上げた千葉が栃木を振り切り、80-71で勝利を収めた。天皇杯ファイナルの再現であり、ともに中2日での試合。天皇杯ファイナルラウンドを4日で3試合を戦ったことも含めれば、『7日で4試合』という過酷さだ。

両チームともに疲労は色濃く残しており、天皇杯ファイナルに続いて終盤に重要な得点を次々と決めて勝利の立役者になった富樫勇樹も、心身両面で準備の難しさを語る。「優勝した余韻から気持ちの切り替えが必要でしたし、疲れもあって難しい試合でした。今日は試合前の雰囲気もちょっと違って、頑張ろうという気持ちはあっても疲れは目に見えました」

そうは言っても、リーグの全体勝率トップを争う両者の激突は意地と意地とのぶつかり合い。互いに譲らず、フィジカルコンタクトも多い熱戦となった。

そんな中で一つのカギとなったのは、天皇杯ファイナルで消耗しなかった選手のパフォーマンスだ。栃木はこの試合から比江島慎が加わっていた。チーム練習ができておらず、準備は万全には程遠かったが、「疲れは全くなくてコンディションは100%です」と言う比江島は、ディフェンスはともかくオフェンスではさすがのタレント力を発揮。効率良く奪った6得点はもとより、自ら切り込んで橋本晃佑へのキックアウト、ボールを受けた瞬間に逆サイドの鵤誠司を見付けてドンピシャで合わせた2つのアシストは見事だったし、ライアン・ロシターとのピック&ロールからの展開は今後大きな武器になりそうだ。

一方、その比江島が栃木にもたらしていた勢いを断ち切る大仕事をやってのけたのが原修太だ。天皇杯ではプレータイムが少なく、準決勝も決勝も出場なしに終わった原には疲労がなかった。だからこそ、心身ともにいつも以上の準備をしてこの試合に臨んでいたと明かす。「優勝した打ち上げの時には悔しい気持ちがどこかにありましたが、コーチや社長と話して気持ちは切り替えられました。出たら自分の仕事をするだけだと思っています。準決勝、決勝とたくさん出ていた選手たちが疲れていたので、そこを助けないといけないという気持ちで臨みました」

原修太

「どんどんチャレンジしていきたい」

圧巻だったのは第3クォーターの最後。48-50とビハインドの状況で比江島のアタックを身体を張って阻止してターンオーバーを誘い、マイケル・パーカーのダンクに繋ぐと、直後のディフェンスでは今度は比江島のジャンプシュートを叩き落とす。ダンクにブロックショットと、ビッグプレーの連発で最終クォーターに最高の流れを作り出し、勝利を呼び込んだ。

疲れている中でどうチームとしてプレー強度を高く保つか。大野篤史ヘッドコーチはその部分での原の働きに称賛を惜しまずこう語る。「彼がインテンシティレベルを上げてくれた。チームとしてのエナジーの部分、その大半を担ってくれました。彼がやってくれなかったら違ったゲーム展開になっていたと思います」

天皇杯こそプレータイムが少なかったが、調子自体は良かった。ディフェンスからエナジーを出し、良いオフェンスへと繋ぐ。原はそんな千葉のスタイルを体現する働きを存分に披露した。「自分の中でもディフェンスで貢献していると思っているので、それを継続すること。得点力がある選手が回りにいるので、自分のところが空いてくるのでそこは気持ち良く打つこと、ドライブをどんどん仕掛けて、ドライブも年末から手応えがあって、あとはフィニッシュを決めるだけなので、どんどんチャレンジしていきたい」

千葉の勝利を語る上でもう一つ忘れてはならないのが、千葉ポートアリーナの『ホームの力』だ。この試合、平日ナイトゲームにもかかわらず5925人の観客が詰め掛けた。富樫は「ホームで助けられたという印象です。6000人近く入ったアリーナに助けられました。これだけお客さんが着てくれている中でひどい試合は見せられない、という気持ちです」と、苦しい中での後押しに感謝した。これで千葉は27勝5敗、栃木に2ゲーム差を付けて全体勝率トップを守っている。チャンピオンシップをホームで戦うため、このポジションを絶対に守り切る覚悟だ。