河村勇輝

「今年は優勝するためだけに、自分ができることを最大限やっていきたいです」

9月16日、横浜ビー・コルセアーズは越谷アルファーズとホームの平塚総合体育館でプレシーズンゲームを行ったが72-82で敗れた。外国籍選手を中心とした越谷の強力なペイントアタックに苦しむと、自分たちは計41本も放った3ポイントシュートが12本成功のみと不発に終わったことが響いた。ただ、これはあくまで練習試合であり、結果は二の次だ。何よりも横浜BCにとっては、ワールドカップの代表活動で長らくチームを離れていた河村勇輝がジョシュ・スコット、ジェロード・ユトフといった新戦力と実戦で一緒にプレーし、連携を深めることができたのは大きな収穫となった。

ワールドカップの激闘を終えたばかりの河村は14分15秒の出場で6得点4アシスト2リバウンドを記録。シュートタッチは良くなかったが、切れ味鋭いドライブにピンポイントパスと、攻撃の起点としていつも通りの存在感を放っていた。

「まずは新加入選手との連携や自分のコンディションを上げていく中で、インテンシティの高い越谷さんと試合をできたことを何よりポジティブに考えていいと思います。結果として負けており、ディフェンス、オフェンスともにもっとコミュニケーションを取ってやれた部分はたくさんありました。ただ、内容についてはしっかりと修正して日々、チームとして良くなっていければいいと思います」

このように試合を総括した河村は、10月7日と近づいてきたBリーグのシーズン開幕へ向け、「全身全霊をかけてこの1年間を戦い抜きたいです」と語る。そして昨シーズンのチャンピオンシップ、天皇杯でともに4強入りという横浜BC史上最高の成績にも全く満足することはなく、去年の躍進はあくまで通過点であり、目指すのは頂点のみと強調する。

「(今シーズンは)在籍4年目となります。最初の2年間は結果が出ないシーズンで去年はビーコルとして少しステップアップできました。今年は優勝するためだけに、自分ができることを最大限やっていきたいです」

河村勇輝

「自分の最大限を日々、更新していくことにフォーカスすることが成長に繋がる」

自分ができること、として河村がより意識しているのはリーダーシップだ。昨シーズンの時点でもコート上の指揮官として卓越した統率力を発揮しているように見える河村だが、本人はさらに高めていきたいと考える。それはオフに森川正明が長崎ヴェルカに移籍したことが大きいという。河村は語る。

「リーダーシップを発揮して、コミュニケーションの部分だけでなくプレーでも引っ張ってくれていた森川さんの穴は大きいと思っています。チーム最年少ですが、森川さんの担っていた部分を自分が責任を持ってやっていければと思います。また、今年は新加入選手が何人もいて、横浜の雰囲気であり、バスケットの感覚をチームに浸透させていく役割もやっていかないといけないです」

今夏のFIBAワールドカップ2023でアジア1位となり、パリ五輪への切符をつかむ躍進を遂げた日本代表の中にあっても河村の存在は際立っていた。河村のプレーを見てみたいと思う新しいファンにとって期待するのは、25得点9アシストのフィンランド戦、19得点11アシストのベネズエラ戦のような活躍だ。また、昨シーズンのBリーグMVPという高い期待もある。このようなプレッシャーは高校時代から慣れているとはいえ、新シーズンにおける『河村狂想曲』はかつてない盛り上がりとなるだろう。

22歳の若者にとって、これは決して簡単に対応できるものではないはずだが、河村に限っては心配することはない。「昨シーズンのBリーグMVPだったり、ワールドカップのような活躍を求める周りの期待に応えなければと、自分にプレッシャーをかけることはないです。でも、新規のバスケファンの方にそういう見られ方をする可能性があるとは思っていますし、意識しない訳ではないです。みなさんの期待にふさわしいプレーを見せたいです」

このように冷静な河村には、常に自分にベクトルを向けるブレない信念がある。「他人の評価以上に今、やられなければいけないことは自分が一番分かっています。いろいろな評価があると思いますけど、自分の最大限を日々、更新していくことにフォーカスすることが自分の成長に繋がると思っています」

飽くなき向上心とハングリー精神を持ち続ける河村はまだまだ発展途上だ。Bリーグの舞台でもワールドカップの時と同じか、それ以上に見るものを熱狂させる大暴れに期待したい。