選手の意識やモチベーションを高めるジャズの工夫、出来高契約を最大限に活用

2019/01/15
NBA&海外
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ジャズ

写真=Getty Images

『勝てるチームを作るため』のインセンティブ

NBA30チームの中で、どこよりもインセンティブ(出来高)を含む契約を結んでいるのがジャズで、実にロスターの3分の2にあたる10選手がその対象となっている。インセンティブとは、コート内外で球団が定める目標を達成した場合に選手に支払われるボーナスで、その条件は選手によって異なる。

『The Salt Lake Tribune』によれば、ジャズはコート上でのパフォーマンス、コンディショニング、シーズンオフ中のワークアウトに関する目標をインセンティブの条件に設定している。そして、これらのインセンティブが、NBAチームの中でも練習に取り組む姿勢が素晴らしいと言われるジャズの基本方針に影響を与えているのだ。

例えば、昨シーズンの最優秀守備選手賞を受賞したルディ・ゴベアの契約を見てみよう。4年契約の2年目にあたる今シーズン、ゴベアは2274万ドル(約24億6000万円)の年俸を受け取る。ただ、彼がNBAオールディフェンシブ・ファーストチームに選出された場合、この金額に50万ドル(約5400万円)のボーナスが加算される。また、彼が出場している時間に100ポゼッションあたりの失点が100点を下回れば25万ドル(約2700万円)、36分換算で球団が設定したリバウンドの数値に到達すれば、さらに25万ドルのボーナスを受け取る。そしてなんと、先発であれリザーブであれオールスターに選出されれば、さらに100万ドル(約1億800万円)のボーナスとなる。

ゴベアは「ボーナスのことは考えていないよ。もちろんオールスターに選んでもらえたらうれしいけど、勝つことだけに集中している。チームが良いプレーを続けられれば、良いことが起こるということさ」と語る。それでも合計200万ドル(約2億1600万円)という『ニンジン』を目の前にぶら下げられて、そのことを全く考えない選手はいない。

コートに出ている間の100ポゼッションでの失点が100点未満だった場合にボーナスが支払われる選手は、ゴベアだけではない。デリック・フェイバーズ、ジョー・イングルズ、ダンテ・エクサム、ハウル・ネトの契約にも同様のインセンティブが付けられているが、ボーナスの条件は、最低でも年間67試合に出場することだそうだ。

ジャズは守備に関するスタッツ以外にも、出場時間、平均得点などにも選手個別に目標値を設定し、それらをクリアすればボーナスを支払う契約を結んでいる。こうしたボーナスを付けてしまうと、出場時間をヘッドコーチに要求したり、独り善がりのオフェンスを実行してしまう選手が現れるのではないかが懸念されるが、フェイバーズの場合は、チームに貢献したいという気持ちを高める方に作用している。彼の場合、年間67試合に出場し、36分換算でのブロック、アシスト、リバウンドで一定のスタッツを残せば、トータル65万ドル(約7000万円)のボーナスとなる。フェイバーズは、対戦相手とのマッチアップ、ゴベアのコンディション、その他の要素により出場時間が一定でないことが多い。それでも球団は、短時間であっても彼に良いプレーをさせるため、インセンティブを契約に含めている。

フェイバーズはボーナスの条件について「平均20得点のような難しいものではないよ。自分は、あらゆる形でチームに貢献できるように努力している。球団も、自分が毎試合で大きなスタッツを残せないことを分かっているからね」と、言う。

先発ポイントガードのリッキー・ルビオのケースになると、オフェンスに関して、より具体的な条件を満たした場合に支払われるボーナスが付いている。このボーナスは、ルビオがティンバーウルブズ時代に結んだ4年契約に含まれたもので、2017年にジャズにトレードされた後も有効なままだという。その内容は、こうだ。

フィールドゴール成功率40%以上で10万ドル(約1080万円)、フリースロー試投数が平均4.1本以上で7万5000ドル(約811万円)、フリースロー成功率82%以上でさらに7万5000ドル。これらのボーナスは、年間62試合以上に出場した上で目標を達成した場合に支払われる。

シーズンオフ中のワークアウトに関してボーナスを付ける狙いは、トレーニングキャンプに万全の状態で参加させるためで、球団が定めた体重、体脂肪率を守れていたら支払われる。このボーナスにより、選手もオフの間グッドシェイプを維持することに意識を置き、良い状態でキャンプに臨める。

フェイバーズが昨年のオフに結んだ新契約には、選手本人、代理人、GMが合意の上で定めた体重と体脂肪率に関するボーナスが含まれている。ここ数年ヒザの故障に悩まされたフェイバーズ自身が、高いレベルでのパフォーマンスを発揮するために必要なコンディショニングに関する条件を理解しているからこそのボーナスと言える。イングルズ、タボ・セフォローシャ、エクサムの契約にも、キャンプを良い状態で迎えるためのボーナスが含まれている。2年目からケガが多かったエクサムの場合は、特に合点がいくインセンティブだ。

そして最後のボーナス条件になるが、ジャズはシーズンオフにソルトレイクシティでチームのコーチと練習することで得られるボーナスを大半の選手に設定している。このボーナスの狙いは、選手たちを球団の行事に参加させることで、シーズンオフ中の地元の雰囲気作りに一役買っている。ロケッツとスパーズのアシスタントGMを歴任後にジャズのGMに就任したデニス・リンジーによれば、選手たちの行事参加が地元にポジティブな影響を与えるという。

ボーナスだけでトータル100万ドル単位のインセンティブ契約を大半の選手が持っているとなると、それだけでサラリーキャップに少なからず影響が出てしまうのではないだろうか? だが、『The Salt Lake Tribune』によれば、NBAは、こうしたボーナスを、前のシーズンの実績を参考に、『達成する見込みの有無』でチームの総年俸に加算するかを決めているという。例えば、昨シーズンの最優秀守備選手賞受賞、オールディフェンシブ・ファーストチームという実績を持つゴベアのオールディフェンシブチームに関するボーナスは見込み有りのため加算されるが、オールスター選出はまだ一度もないため、球宴出場に関するボーナスは見込みなし扱いだという。

ボーナスと聞くと、金目当てというネガティブな印象を持ってしまうかもしれないが、すべては勝てるチームを作るため、守備と個人のレベルアップを重視するジャズらしい手法だ。ゴベアの契約に含まれている、オールスター選出で100万ドルのボーナスは高額だが、もし受給資格を得られれば、チームの戦績にも良い影響が出るはず。今シーズンの総年俸額はリーグ20位ながらも、西カンファレンスの上位と2、3ゲーム差の9位につけているジャズは、独自のやり方で選手のモチベーションを高め、それをチームの戦績に反映させようとしている。