シェイ・

「ハードワークをすれば不可能なことはない。それを子供たちに示すために僕たちは戦っている」

FIBAワールドカップ2023はドイツの優勝で幕を閉じた。ドイツは華麗なチームバスケットボールでファンを魅了したが、同時に、大黒柱のニコラ・ヨキッチを欠きながら準優勝に輝いたセルビア、3位決定戦でアメリカを撃破し初のメダルを獲得したカナダ代表の躍進も光っていた。

今大会のカナダは、昨シーズンのオールNBAファーストチームであるシェイ・ギルジャス・アレクサンダーを筆頭に、ディロン・ブルックス、RJ・バレット、ルーゲンツ・ドート、ドワイト・パウエル、ケリー・オリニクといったNBAでの実績豊富な選手たちが集った。同国代表において過去最高レベルのタレントが揃ったチームは、同じようにNBA選手を多数揃えながら東京五輪最終予選で敗れてしまった2年前の反省を生かし、チームとしてもまとまっていた。その結果として銅メダルを獲得し、2000年のシドニー大会以来となる五輪の出場権獲得という大きな成果を成し遂げた。

タレント集団のカナダにあって数少ない替えの効かない選手が、エースのアレクサンダーだった。95-65でフランスに、128-73でレバノンに圧勝したグループリーグ2試合についてはプレータイムが抑えられたが、2次ラウンド以降は5試合連続で34分以上のプレータイムを記録。中1日での試合が続く過密スケジュールで大会通算8試合出場、平均32.1分出場で24.5得点、6.4リバウンド、6.4アシスト、フィールドゴール成功率54.4%と見事なパフォーマンスだった。トータルの貢献度を示す指標であるエフィシェンシーでは、平均30.4と大会トップの数字をマークした。(ちなみに2位はジョシュ・ホーキンソンの28.6だった)

本来は疲れを癒すはずのオフシーズンにここまでフル稼働したアレクサンダーの、来るべきNBAシーズンへの悪影響を心配する声は多い。だが、『Eurohoop.net』によると、アレクサンダーはこのようにそういった見方を否定しているという。「ワールドカップは、NBAの新シーズンに向けた準備の助けになると思う。絞った身体でプレーしてきたから、シーズンに向けていろいろとアジャストする必要がないからね」

そして3位という好成績によって、カナダの次世代の子供たちに夢を与えられたらうれしいと続ける。「僕たちはハッピーだ。今大会の結果で、カナダの子供たちに新たな可能性を示すことができたらいいと思う。ハードワークをすれば不可能なことはない。それを子供たちに示すために僕たちは戦っている」

今大会の銅メダルにより、カナダは来年のパリ五輪を優勝候補の一角として迎えるだろう。今回欠場したジャマール・マレー、アンドリュー・ウィギンズ、トレイ・ライルズ、ブランドン・クラークといった面々が加入すればチームはさらなる底上げが期待できる。「僕たちは本当にいい集団だと自信を持っている。そして、もっと一緒にプレーすることで、僕たちはより良くなれる。このチームにワクワクしているんだ」。こうアレクサンダーが語ったように、カナダ代表はさらなる進化へ伸びしろ十分な状態で来年の五輪へ挑む。