ハメド・ハダディ

「最後の最後まで迷ったけど、ここで代表キャリアを終える」

アジアの強豪国イランは、5戦全敗でワールドカップの舞台となったジャカルタ(インドネシア)を去ることになった。最後の試合はレバノン代表との中近東のチーム同士の対決となり、1勝を挙げる大きなチャンスではあったが、序盤から劣勢を強いられる。第4クォーター残り6分半で49-68と、この試合で最大の19点差を付けられたが、ここからイランは意地の巻き返しに出た。

イラン代表を長年引っ張ってきた大黒柱、ハメド・ハダディのフリースローでようやくこのクォーター最初の得点を奪うと、ここから残り38秒で4点差まで追い上げる。それでもレバノンの最後の踏ん張りを崩すことができず、最終スコア73-81で敗れた。

試合終了のブザーが鳴ると、レバノンは歓喜の輪を作った。ハメド・ハダディはチームメートの健闘を称えるとレバノンの選手の輪に入り、ライバルたちとハグをかわした。コートを去ろうとする彼に、レバノンのファンも立ち上がって拍手を送る。その数分後に彼が下す決断は、もう予見されていた。

イランはオリンピック世界最終予選への出場権も手に入れられず、パリ行きの可能性が断たれた。かくして彼は、アンダー世代を含めて22年を過ごしたイラン代表からの引退を発表した。

「バスケットボールと代表チームを愛してきたが、いつかは去らなければならない日がくる。それが今日だ」とハダディは語う。

「代表チームでは長くプレーしてきた。調子が悪くてもプレーできる時はコートに出て、自分にできる限りのプレーをしてきた。僕にとってはとても難しい決断で、最後の最後まで迷ったけど、ここで代表キャリアを終えることする。これからは若い世代のための時間だ。もっと試合に出てプレー経験を積むべき選手がいる」

このワールドカップでは10.0得点、6.3リバウンド、3.5アシストを記録。全盛期はもう過ぎていたのかもしれないが、イラン代表の大黒柱としてチームを引っ張る姿勢には何の変化もなかった。

「僕を支えてくれたすべての人に感謝したい。ライバルも、僕を批判した人も、僕が目標達成に真剣になるという意味で助けてくれた。これからのイラン代表の成功を祈る」

中国リーグの四川金強ブルーホエールズでのプレーはまだ続けるが、NBAで151試合に出場したイラン唯一のNBAプレー経験者であり、オリンピックにも2度出場したアジアのレジェンドは、静かに国際大会の舞台を降りた。