マイケル・パーカー

取材・写真=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎

クラッチシュートは「無心で全力でプレーしただけ」

バスケットボール天皇杯の準決勝、アルバルク東京との試合は最後まで分からない大混戦となった。ラスト1秒でゴール下をねじ込み、この混戦に終止符を打ったのはマイケル・パーカーだ。残り9秒で安藤誓哉のシュートを叩き落とすと、すぐさま反撃に転じる。トップスピードのまま富樫勇樹からのロブパスを受け取り、空中でそのままシュート。これはリングに嫌われたが、すぐさま体勢を立て直してオフェンスリバウンドをつかみ、ゴール下のシュートを今度はきっちりねじ込んだ。

どんな気持ちでプレーしていたか? との問いに「何もないよ、ただ無心で全力でプレーしただけだ」とパーカーは答える。「アルバルクは強いし、劣勢の時間帯もあったけど、絶対にあきらめずにプレーに集中した。その結果、逆転して勝つことができた」

「追い上げられてもナーバスになることはなかった。前にもこういう経験はあるし、焦る必要はない。このレベルになると良いチームばかりだから、違いはわずかなものになってくる。時に一つのシュート、一つの判定で勝敗が分かれるんだ」

その『一つのシュート』がまさに勝敗を分けた。それを決めることができた秘訣を問うのはナンセンスだったようで、「これがバスケットだ」とパーカーは言う。

「決めることもあるし、外すこともある。でも、そのボールをつかむことができた。時間がなかったからそのままシュートに行くしかなかったけど、いつものようにプレーしただけだよ。その結果、ああいう最後になってくれた」

千葉ジェッツ

「どんな時でも決勝はエキサイティングだ」

取材エリアでそう話すパーカーの背後を、先に取材を終えた田中大貴が、ザック・バランスキーが「おめでとう、マイク」と声を掛けながら通り過ぎていく。パーカーにとってA東京(トヨタ自動車アルバルク)は古巣。言わば恩返しの一発だった。「自分が在籍していたのはもう3年前だから、これといって特別な感情はないけど、彼らには敬意を持っているよ」とパーカーは語る。彼らに対するリスペクトは、ファイナルに臨む上で新たな力になるに違いない。

ファイナルの相手は栃木ブレックス。「Bリーグになってから同じ地区で何度も対戦しており、互いによく分かっているライバルだ。勝率でリーグ1位と2位の対戦だから、またタフなゲームになる」とパーカーは言う。

それでも、その厳しい試合を勝ち切って3年連続で天皇杯のトロフィーを手にすることを、彼は信じて疑わない。「どんな時でも決勝はエキサイティングだ。僕たちはここ2年連続で決勝に進んでいるし、昨シーズンのBリーグファイナルもそうだったし、これまで何度もファイナルを経験しているけど、それでいて慣れることはない特別なもの。ナーバスにはならないけど、大舞台でプレーするのは興奮するし楽しみだ」

千葉ジェッツと栃木ブレックスの天皇杯決勝は今日14時から行われる。