渡邊も絶賛「流れを作ったのは間違いなく河村です」
バスケットボール男子日本代表はワールドカップの順位決定戦でベネズエラ代表と対戦し、86-77で勝利を収めた。
決して簡単な試合ではなかった。むしろ、最終クォーター開始約2分でこの試合最大となる15点のビハインドを背負うなど、敗戦ムードが漂っていた。しかし、その雰囲気を河村勇輝が変えた。
河村は高速ドライブからレイアップを決めて反撃ののろしを上げると、持ち味であるタフなディフェンスでベネズエラのオフェンスを停滞させた。渡邊雄太はこのように河村のパフォーマンスを称賛する。
「流れを作ったのは間違いなく河村です。彼がポイントガードにめちゃくちゃプレッシャーをかけてくれて、相手がやりたいバスケットをできなくなっていました。ディフェンスは河村、オフェンスはマコ(比江島慎)が自分たちを引っ張ってくれました」
渡邊が言うように、河村のディフェンスが効いたことでベネズエラは失速。結果的に約8分間で9点しか奪えず、逆転負けを喫した。
ディフェンス面で主役を演じた河村だが、彼の活躍はそれだけに留まらない。残り1分13秒には、リードを5点に広げ勝利を大きく引き寄せる3ポイントシュートも沈めた。試合を通して29分16秒コートに立ち、19得点11アシストのダブル・ダブルを達成。河村は自身のパフォーマンスには触れずに、劇的な逆転勝利ができた理由をこのように話した。
「劣勢な時間が続いても、集中力を切らさずに最後まであきらめずにプレーができたこと。そして、流れが来た時に不用意なターンオーバーをすることなく、その流れをずっと継続させるためのプレーをし続けたことだと思います」
また、劣勢が続く中でも追い込まれた感覚はなかったと続けた。「15点差はあったものの実力差はそこまでなく、自分たちから崩れていった感覚が強かったです。逆に言うと、15点差が開いた後の8分間で、焦る事なく戦い抜けば、(点差を)戻せる自信がチームとしても、僕としてもありました。ちゃんとしたら戻れるって気持ちで戦っていたので、そこは冷静に立ち回れたかなと思います」
「自分たちが勝てばパリ五輪のチケットが取れる状況にあります」
ファンにとっては大興奮の逆転劇となったが、一方で粗さも目立つ内容だった。河村も「試合は勝ちましたけど、最後の10分間ぐらいしか自分たちのバスケットができなかった悔しさはある」と言う。そして、15点差を覆した喜びよりも、こうした状況を招いた危機感のほうが強いと振り返った。
「良くなかったです。本当に自分たちのバスケができたのは最後の8分間だけだと思っています。オーストラリアやドイツなど、本当の強豪国に勝つには、こういった展開になるとすごく難しくなります。反省のほうが大きいです」
内容はどうあれ、最大の目標であるパリ五輪の出場権獲得へ大きく前進したのは間違いない。ベネズエラ戦の前までは、日本のパリ五輪出場条件は非常に複雑だったが、2勝目を挙げたことで、シンプルにカーボベルデ戦に勝利すればいい状況となった。「アジアチームの勝ち負けを気にすることなく、自分たちが勝てばパリ五輪のチケットが取れる状況にあります」と河村は言う。もし、カーボベルデに敗れたとしても、パリへの可能性は残されている。それでも、河村が言うように最終戦を勝利で終えて、最高のエンディングを迎えてほしい。