田中大貴

文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

「相手のペースに持ち込ませなかった」守備の勝利

天皇杯準々決勝のアルバルク東京vsシーホース三河は、優勝候補同士の一戦という前評判とは異なり、A東京が攻守両面で相手を上回り、試合の主導権を常に握り続ける形で完勝を収めた。

個々の能力が高い上に連携も出来上がっている鉄壁のディフェンス。ポイントガードの安藤誓哉だけでなく田中大貴や馬場雄大もピック&ロールからズレを作り出し、そこから正しい判断を次々と下すことでイージーシュートの機会を作り出すオフェンス。そして先発と同等の実力を持ったベンチメンバーを擁して40分間プレー強度を落とさず、トラブルにも強い層の厚さ。A東京の強みをすべて発揮した試合となった。

それでも、チームリーダーの田中大貴はディフェンスの勝利であることを強調する。「相手の強みはインサイドですが、そこをウチのインサイドの選手がボールを持たせる前にファイトして持たせませんでした。やられる場面もあったのですが、まずはそこで守れたこと、オフェンスリバウンドが強い相手にチームみんなで頑張って、それで相手のペースに持ち込ませなかったのが勝因です」

「初めての会場で慣れない中、オフェンスに集中するのではなく、自分たちの持ち味であるディフェンスをどこまでできるかにフォーカスしていました。なので、ディフェンスの勝ちです」

第3クォーターを終えて64-39と勝敗は早々に決していたが、それでもA東京は田中を始め主力のローテーションを崩さず、若手をコートに送り出したのは残り1分半になってからだった。「点差が開いた後、少しは追い上げられましたけど、トーナメントなので終わり方が大事という話をしていました」と、大会全体を見据えての選手起用だったことを田中は明かす。

田中大貴

チームに手応えも「次の準決勝のことだけを考えたい」

明日の準決勝は千葉ジェッツとの対戦。それでも田中に臆するところは全くなく、自信を持って試合に臨めそうだ。「去年、自分と(馬場)雄大と(竹内)譲次さんはこの大会に参加できず、チームも先に進めなかったので、そこに対するモチベーションはあります。一日しっかり準備して、次の準決勝のことだけを考えたいです」

その落ち着きはやはり、昨シーズンのBリーグ王者になったことで生まれたもの。田中も「そうですね、余裕はあります」と否定しない。「成功体験をしたことで、自分たちがどういうプロセスを踏んでそこに行ったのか、それには自信があります。ディフェンスをやるチームでないと僕たちは勝てないので、ディフェンスがカギになるし、それをしっかりやっていきます」

チーム一丸の堅守、ピック&ロールを起点とする多彩なオフェンス、という点において共通するA東京と千葉。違いはA東京の選手層の厚さと、千葉のスピードとなる。昨シーズンのBリーグ王者と天皇杯チャンピオンの激突は、一発勝負の緊張感をはらんだ好勝負になるに違いない。