ジョシュ・ハート

「彼の動きによって私たちは最初のアドバンテージを作り出せる」

FIBAワールドカップ2023、優勝候補筆頭のアメリカ代表はグループリーグでニュージーランド代表、ギリシャ代表にそれぞれ大差で勝利と危なげないスタートを切った。今大会、ここまでアメリカ代表は10人、11人のローテーションで40分を通して強度の高いプレーを継続し、スピードやフィジカルで相手を圧倒している。109-81で勝利した昨日のギリシャ戦はチームトップの15得点を挙げたオースティン・リーブスを筆頭に9人が8得点以上と、文字通り誰でも、どこからでも得点を取れるバランスの取れたオフェンスを展開した。

個々の選手のタレント力で他チームを圧倒しているアメリカ代表だが、大会前の準備期間は約1カ月と連携面が不安視されている。それだけに、味方を生かすプレーなど泥臭い仕事を着実に遂行し、攻守の潤滑油となれるオールラウンダーの存在は、チームとして機能するために欠かせない。今回のアメリカにおいて、この役割を担っている1人がニックスのジョシュ・ハートだ。2番から4番まで複数のポジションを難なくこなし、200cm以下の選手の中ではNBA屈指のリバウンド力を誇る。スモールラインナップ主体のアメリカ代表の戦術にフィットし、その日に日に存在感は高まっている。

ギリシャ戦では、20分半の出場でシュートを放ったのは2本のみの6得点だったが、5つのオフェンスリバウンドを含む11リバウンド5アシストと、自分のやるべき仕事を完璧に遂行した。試合後の会見でスティーブ・カーヘッドコーチは、「彼は勝者だ」とハートの球際の強さを称える。「どんなポジションでプレーしても彼は勝者になれる。ある時、スポ(エリック・スポールストラ)が、『普通の選手は50-50のルーズボールの争いなら勝てる。それがハートなら30-70の状況でもルーズボールをもぎとってくれる』と言っていた」

さらにカーヘッドコーチは、アメリカ代表の最大の武器である速攻においてもハートの貢献は大きいと言及する。「また、彼はスキルも優れている。トランジションにおける彼のボールプッシュは本当に素晴らしい。彼の動きによって、私たちは最初のアドバンテージを作り出せる。そこからドミノが倒れていくようにパスを繋いでいくことで、相手のディフェンスを崩せているんだ」

ハートはチーム上位の得点を挙げたり、ハイライト映像となるような派手なプレーを見せることは少ない。ただ、アメリカ代表の王座奪還において、ハートのいぶし銀の活躍は大会が進むごとに重要度を増していく。