ラスト1分、あきらめない川崎がドラマを生み出す
天皇杯のファイナルラウンド、男子準々決勝で千葉ジェッツと川崎ブレイブサンダースが激突した。優勝候補同士の一戦は、終盤に川崎が脅威的な粘りを見せ、残り23秒で2点差まで詰め寄ったが、最後は同点を狙った藤井祐眞の3ポイントシュートが外れ、66-63で千葉がベスト4へ進出した。
第1クォーターで19-17とリードした千葉だが、第2クォーターに入ると林翔太郎や藤井のダブルチームなどのプレッシャーを受けたギャビン・エドワーズのゴール下のシュートがことごとくリングに嫌われ、第2クォーター開始から約6分半も得点が止まる。バーノン・マクリンと藤井のアタックを止められない。それでもディフェンスで踏ん張って失点を最小限に抑えたことで2点のビハインドで前半をまとめると、後半に入って得意のトランジションオフェンスも出始めたことで主導権を握り、早々に逆転してリードを広げていく。
一方、川崎は千葉のアグレッシブなディフェンスの前にオフェンスが重くなり、タフショットが続き得点が止まる。川崎の3ターンオーバーに対し、0ターンオーバーで第3クォーターを終えるなど、高い集中力を見せた千葉が、第4クォーター残り7分半には西村文男がゾーンディフェンスの弱点を突く3ポイントシュートを沈め、この日最大となる14点のリードを奪った。
川崎はニック・ファジーカス、シェーン・エドワーズ、バーノン・マクリンのビッグラインナップを用いるものの、インサイド攻めに固執してパスが回らなくなる。篠山竜青の連続3ポイントシュートなどで6点差に詰め寄るが、その篠山が自陣でボールを奪われるターンオーバーから富樫にシュートを許し、残り59秒で10点のビハインドを背負った。
一つのターンオーバーが試合を左右する激闘に
この時点で誰もが千葉の勝利を確信したが、川崎はここから驚異的な粘りを見せる。オールコートで猛烈なプレッシャーを掛け、連続でターンオーバーを誘いポゼッションを奪取すると、ファウルを獲得してフリースローで詰め寄った。そして、残り23秒には、長谷川技が3ポイントシュートを沈め2点差と肉薄する。
ファウルゲームを仕掛け、3点差で迎えた最後のオフェンス。残り時間は23秒と2点を狙っても良い場面だったが、ズレが作れず時計は進み、残り4秒で藤井が放った3ポイントシュートが外れて試合終了となった。
勝利した大野篤史ヘッドコーチは、終盤に猛追された場面をこう振り返る。「ボールをしっかり入れるところですけど、みんなボールをもらいたくないような動きになり、余計にテンパってしまった。信用しているメンバーが出ていて一つタイムアウトが遅れたのは私も反省です」。それでも、結果が問われる一発勝負の中で「トーナメントなので勝つのが大事。勝ち切る力を選手が持っていたことは評価したい」とコメントした。
また相手のターンオーバーからペースをつかみながらも、終盤の連続ターンオーバーで試合をひっくり返されかけたことで、富樫勇樹は「一つのターンオーバーが試合を左右するポイントになるので、そこはガードとしてしっかりコントロールしたい」と、アルバルク東京と対戦する準決勝を見据える。3連覇を目指す今、チームへの自信が富樫にはある。「今はBリーグ全体の勝率トップでこの天皇杯に入っているので、自分たちが一番チャンピオンに近いチームだと思っていますし、あと2つのところまで来ていますので、優勝のためにこの後の試合も戦いたいです」
38分とほぼ出ずっぱり、誰よりもエネルギッシュに奮闘した藤井祐眞は、ラストショットのシーンを「後になったことだから言えることですが」と前置きをして、「シュートフェイクする時間もまだありましたし、相手を飛ばすこともできた。最後数秒の中でその判断ができれば、もっと良いシュートが打てた」と、タフショットになった最後の判断を悔いた。
『心に響く、一発勝負』。キャッチコピーに遜色のない戦いがそこにはあった。
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