「試合前に『今日は最高のプレーができると思います』ってLINEが来てました」
8月27日、男子日本代表はワールドカップのグループリーグ2戦目でフィンランド代表を98-88で撃破した。
2006年以来となるワールドカップでの勝利。この17年ぶりの偉業達成は、チームが一丸となったことでもたらされたことは言うまでもない。もちろん全員がヒーローだが、25得点9アシストを挙げた河村勇輝は特に賞賛されるべきだろう。
その河村を福岡第一高校時代に育てた井手口孝コーチは「昨日の朝、練習試合をしてから現地に飛んで行った感じです」と、会場で愛弟子のプレーを見ていたという。そして、歴史的な逆転勝利を収めたフィンランド戦をこのように総括した。
「ノリましたね。 相乗効果というか、シュートが入りディフェンスが機能する。河村のディフェンスのプレッシャーから、随分良い感じになってきたかなと。富永(啓生)までディフェンスを頑張っていたから。富永まで(笑)。でも、本当に頑張っていたからね。最後は渡邊雄太も身体を張ってね、頑張ってディフェンスで仕事していましたね」
2018年のウインターカップ準決勝で福岡第一は桜丘と対戦。河村と富永の対決に注目が集まる中、福岡第一は103-72で快勝したが富永に前半だけで31得点を許した。当時からオフェンスに全振りしていた富永を知っているからこそ、彼のディフェンス面の貢献を称えたのだ。奇しくも、トム・ホーバスヘッドコーチも「若い富永、河村はオフェンス面で大きな勢いを与えてくれました。そして富永はとても激しい守備を見せてくれました」と、富永のディフェンス面での貢献について言及していた。
フィンランド戦の終盤、河村は1on1を仕掛け続けて得点とアシストを量産し、『河村劇場』と呼べる活躍を見せた。井手口コーチは控えめに河村の活躍を喜びつつ、メンタル面の成長について言及した。
「まぁ彼の普通の仕事をやっただけでしょう。途中で『これってBリーグの試合だったっけ?』みたいになって、これは世界選手権だったって(笑)。(ラウリ)マルカネン選手の上からもシュートを決めていたね。なんというか、謙虚に先輩たちを立てながら、敬いながらリーダーシップを取っている。最年少だけど、最年長みたいな。でもプレーでは気を使わずに、ここは俺が打たなきゃしょうがないみたいな感じがしましたね」
試合当日に河村と連絡を取ったという井手口コーチは、彼とのやり取りの一部を明かしてくれた。「『先生どこに座ってますか?』って来てたから、ちょっとだけやり取りしました。ドイツ戦はやっぱり緊張してたみたいで、 だから今日はリラックスなって言って、あとは頭をクールにハートは熱く頑張れって伝えました。そうしたら、試合の前に『今日は最高のプレーができると思います』ってLINEが来てました」
河村の爆発のきっかけを作った井手口コーチは「オーストラリアは強いけど、やってやれないことはない。もう1つ勝って、さらに歴史を動かしてほしい」と、日本の再びの奇跡を望んでいる。