プエルトルコがオーバータイムの末に南スーダンを撃破
グループBの初戦となったプエルトルコ代表vs南スーダン代表は、オーバータイムまでもつれる激戦となりました。試合を終始優位に進めた南スーダンのチーム力が光りましたが、苦しい状況でも我慢の戦いを続けたプエルトルコが最後に抜け出して101-96での勝利を収めました。この試合展開は両チームのポイントガードの特徴をよく示すものでした。
始めに目立ったのはプエルトリコのトレモント・ウォーターズで、マークを引きはがしてのディープスリーを次々に沈めると、さらにドライブで切り崩してゴール下へパスを通していきました。180cmと小柄な選手らしいアジリティとシュート力を武器に、スコアリングガードとしてチームを牽引しました。
当然、南スーダンはウォーターズへの警戒を強め、アフリカのチームらしい手の長さを使ったハイプレスで追い込んでいきます。ここでウォーターズはプレーを一変させます。コートを広く使うためにハーフライン近辺でボールをコントロールしてディフェンダーを引き出すと、スペースが広がったゴール下へパスを通し、さらにディフェンスが収縮すると両コーナーへ3ポイントシュートに繋がるパスを供給しました。
ディフェンスの対応に合わせてスコアリングタイプからパサータイプへの変身するウォーターズの冷静な判断は、ビハインドの状況でミスが起きても、焦ることなく追い上げるプエルトリコの特徴でもありました。
一方の南スーダンはチーム全体でしっかりとスペーシングし、中央でコンビプレーを使って崩しながら両コーナーを活用していく現代バスケらしいチーム力を披露しました。
カルリク・ジョーンズはコントロールタイプのポイントガード。テンポ良くパスを散らしてバランスアタックを形作り、特にウェニェン・ゲイブリエルが支配したインサイドを中心に、前半だけで52得点を奪いました。
後半になってバランスアタックを警戒するプエルトリコがマンマークを強め、何よりインサイドのカバーを厚くすると、ジョーンズもスコアリングガードへと変身し、ディフェンスのギャップへとドライブで飛び込むプレーを増やします。ボールを長く持っての突破ではなく、パスフェイクを巧みに使いながらスペースを活用するジョーンズのプレーに手玉に取られたプエルトリコですが、それでもバランスアタックされるよりはマシでした。
ハイスコアの前半からディフェンシブな戦いとなった後半、プエルトリコはフィニッシュに苦しみながらも徐々に追い上げ、残り16秒でついに逆転に成功。ファウルゲームによって得たフリースローをウォーターズが決めて、試合を決めたかと思われました。しかし、フリースロー後のスローインからボールを運んだジョーンズが迷うことなく放った3ポイントシュートを決め、試合はオーバータイムへと突入します。
オーバータイムではプエルトリコが3ポイントシュートで先行します。南スーダンはハイプレッシャーディフェンスに出ますが、ウォーターズはどんなにプレッシャーをかけられても落ち着いてボールをキープし、チームを落ち着かせ、ショットクロックを使っていきました。ジョーンズの得点力に苦しんだものの、点差と時間をコントロールしたプエルトリコが接戦を制したのです。
ウォーターズは19得点11アシスト、ジョーンズは35得点11アシストとハイレベルなポイントガードバトルが繰り広げられた一戦でした。ディフェンスの状況を見ながら自身のプレーを柔軟に変更する引き出しの多さと、何よりもチーム全体をコントロールしていくメンタリティは『これぞポイントガードの仕事』と唸らせるプレーでした。ともに25歳のウォーターズとジョーンズという新たな才能は、世界大会だからこその新たな発見でした。