[CLOSE UP]阿部友和(千葉ジェッツ)練習でも試合でも100%のハードワークを続ける『万能の黒子』が手にした初優勝

2017/01/11
Bリーグ&国内
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文=丸山素行 写真=鈴木栄一

試合の流れを千葉に引き寄せたのは『2番手のガード』

『オールジャパン2017』決勝、千葉ジェッツでは富樫勇樹が華麗なプレーでオフェンスを牽引して勝利の原動力となった。だが、2番手のポイントガードである阿部友和の働きも、川崎ブレイブサンダース相手の勝利に不可欠なものだった。

シックスマンの彼がコートに入ったのは第1クォーターのラスト8秒という場面。最後のポゼッションでの守りを、背の低い富樫ではなく阿部で、という起用だった。それでもすぐに迎えた第2クォーターで、阿部は『富樫を休ませる間のつなぎ役』どころではない、抜群のパフォーマンスを披露する。

第1クォーターは打ち合いの様相を呈していた。外国人オン・ザ・コート数が「1」の状況で2点ビハインドは十分に合格点を与えられるが、「ディフェンスマインドを重視し、ディフェンスからオフェンスのテンポを作る」という千葉のバスケットができていたわけではない。富樫は相手にダメージを与える3ポイントシュートを含む7得点1アシストと大暴れしていたが、同時にターンオーバー5を記録し、バタバタの展開を作り出してしまってもいた。

そんなゲームの流れをキリリと引き締めたのが阿部だ。「ウチにはスペシャルと言っていいぐらい得点ができる富樫というガードがいる中で、もちろん僕も得点できないわけではないですが、それよりもディフェンスを意識しています。ビハインドで入ったので、どうリードに持っていくかだけを考えていました」

スターターのポイントガードが大活躍している中、それとは異なるアプローチでのチームへの貢献を考え、気持ちと身体をしっかりと準備する。シュートが当たっていた富樫がベンチに下がったことで、川崎の選手はホッとしたかもしれない。だが、そこからは思うような攻めができない『苦難』の時間帯が待っていた、

自らのプレーでチームのディフェンスマインドをセットし直し、流れを一気に引き寄せた阿部。自身のディフェンスマインドをこう語る。「ポイントガードというのは前から当たるので、みんな僕の背中を見てディフェンスします。だから僕がダラけるとみんなもダラダラしてしまうし、僕がハッスルして盛り上げれば、みんなも自ずと良いディフェンスができます。それだけを見せようと思っていました」

「チームに合ったプレーができるという点が僕の強み」

結局、阿部が9分36秒出場と『任された』第2クォーターで19-7と川崎を圧倒。阿部は激しいディフェンスの先頭に立ち、ただ相手の得点を許さないだけでなく、リズムを完全に狂わせる大仕事をやってのけた。さらにはこの試合で唯一の得点ながら、川崎にとってはダメージの大きい3ポイントシュートを決めている。

思い切りよく放って沈めた3ポイントシュートだが、この試合で放ったシュートはこの1本のみ。「みんなシュートが上手な中で誰かが捨てられる、誰が空くか、ということで準備はしていました。決める自信もありました」と阿部は言う。

決して守備だけの選手ではない。大学時代はインカレ得点王と3ポイントシュート王に輝いており、プロ入り後も切磋琢磨を続けている。「もちろん、点を取れる時には取りに行きます。今日のように良いタイミングでパスが来れば決める自信もあります。ただ、ウチはみんな得点できるので、そこではバランス感覚が必要だと思っています」

「ポイントガードは最初にボールを持つので、やろうと思えばパスしないで1対1もアリはアリです。でも、バスケットは5人でやるので、試合の中でタッチが良い選手がいればそこを使うし、ウチは攻めの選手がたくさんいるので、誰かが黒子になる必要もあります。そのバランスの中でタイミングがあればシュートを沈める、それが僕のスタイルなのかなって。僕は得点もできるしディフェンスもできる。自信過剰なのかもしれませんが、できると思っています。その中でチームに合ったプレーができるという点が僕の強みなんです」

『何でもできる』というスタイルは、絶え間ない努力の積み重ねにより築き上げられたものだ。ただ、阿部に言わせれば逆らしい。「何でもできるからすべての努力をしないといけないんです。オフェンスもディフェンスもできるから、すべての練習で気を抜かずやらないと」

大学時代から練習では鬼の厳しさを見せるという大野篤史ヘッドコーチをして、「選手に休めと言ったのは初めて」と言わしめる練習量をこなす阿部はこう話す。「ケガもあったので、休む時は休むことが必要だと分かっていますが、自分の中で毎日100%の努力をするというのは高校生の時から続けていることです」

練習しすぎとの指摘にも「僕のバスケット人生は僕のもの」

1年半前、千葉に加入してすぐにアキレス腱断絶の大ケガを負った。それまで長期離脱を経験したことがなかった阿部にとっては苦しい経験だった。「現時点でもケガ前の動きが戻ったかと言うと100%ではありません。跳ぶとか走るといった能力だけで言ったら70%ぐらい。でもそれはそれで、その中でリズムを変えてドライブしたり、新しい自分を出そうとやっています」

大ケガを負ったことで得たものもある。「キツい時にキツいことをできる選手になったと思います」と阿部は言う。「ケガをして5カ月で復帰したとして、元の位置に戻るだけだったらその間に何もしていなかったのと一緒です。5カ月かかるのであればケガする前にただ戻すのではなく、ここから何ができるか考えようと。知り合いのトレーナーさんからそう言われたのが、すごく身に染みて、新しい自分になろうと意識してリハビリをしてきました。だからケガの前はもっと跳べたとか速かったと言いますけど、あの頃より上手くないとは言いたくないですし、思ってもいません」

それでもヘッドコーチがオーバーワークを不安視するほどの猛練習は続いている。「ケガに強い選手になりたいんです。これで僕がケガをしたらオーバーワークですけど、今はケガをせずにしっかりやれていると思っています。そこまで練習する必要があるのかと言われたりしますが、僕のバスケット人生は僕のものなので、そこは大野さんに言われてもやる時はやります」

チーム練習後の自主練ではしばしば最後の一人になるまで残っている。2日のオフがあれば2日目には練習したくなる。これは激戦区である福岡県を勝ち抜くことができず、全国では無名だった高校時代からの習慣だ。「その頃からやらなきゃいけないことを自分で決めていました。足りない部分をどうやったら上手くなれるかと考えると、やりたい意欲がどんどん出てしまうので」と阿部は笑う。

トップレベルで活躍している選手で努力していない者などいないが、阿部のバスケットへの意欲は突出している。「まあストイックと言われたらそうかもしれないですけど、僕はプロとして当たり前だと思ってるので。オーバーワークでケガをするようでは、それはまたプロとしてダメなので、しっかりケアもやってもらっています。手間のかかる選手ですが、そういう周囲の助けがあるおかげで全力でやれています」

自分の実力に自信を持ち、それでの努力を積み重ねた末に、ようやく手にした初タイトルの味は格別だろう。「インカレで3位、その時に個人賞は取っていましたが、プロになって9年間タイトルはありませんでした。北海道で7年、千葉で2年目です。いろんな判断があってここに来て、間違いじゃなかったと思います」

勝利の味を知ったことで、千葉はチームとしてまた一回り成長するものと予想される。富樫という若くイケイケな司令塔に加え、ベンチには阿部のような『万能の黒子』もいる。現在はケガで離脱中の西村文男も昨シーズンはスターターだった選手で、強い気持ちで復活を期している。

突出したタレントではなくチーム力で戦う千葉ジェッツにおいて、質と量が揃い、さらにはプレースタイルのバランスも噛み合ったガード陣を擁していることは今後も強みになっていくはずだ。