[CLOSE UP]富樫勇樹(千葉ジェッツ)果敢なプッシュを続けチームに栄冠をもたらした『超攻撃型』司令塔

2017/01/10
Bリーグ&国内
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文=丸山素行 写真=鈴木栄一

攻撃を引っ張るも勝因に挙げたのは「チームディフェンス」

『オールジャパン2017』、千葉ジェッツは栃木ブレックス、シーホース三河、川崎ブレイブサンダースと強豪を次々と撃破し、見事にクラブ初のタイトルを手にした。決勝の川崎戦でもこれまでと同じく『全員バスケ』を貫いて勝利をもぎ取った千葉だが、4本の3ポイントシュートを含む20得点を挙げ、チームを牽引した富樫勇樹の存在はとりわけ大きかった。

攻撃面でチームを牽引した富樫だが、勝因に挙げたのはチームディフェンスだった。「相手の持ち味を全く出させることなく勝てたのは、チームのディフェンスとして自信になりました」

準々決勝では平均81.1得点(リーグ5位)の栃木を62点に抑え、決勝では平均86.2得点(リーグ1位)の川崎を66点に封じた。このロースコアを実現したのは『個の闘争心』だと富樫は言う。「一人ひとりが自分のマークマンに1点もやらせないような気持ちでやっているのが良いと思います。特にシューター陣で乗せると怖い選手がいたので、そこを徹底して守れたのが良かったです」

その分かりやすい例として挙げられるのは、川崎が誇るシューターの辻直人を激しいディフェンスで封じた原修太だ。富樫はその働きをこう称えている。「原があそこまで頑張ったのが良かった。最初はスタメンだったのですがケガ明けでなかなか試合に出れずにいたので、これで自信になったと思います。同い年なので一緒に頑張りたいと思います」

富樫も守備に奔走した。高さがないディスアドバンテージをチームにカバーしてもらいつつ、走ることでリバウンドにも貢献。そしてボールを託されればスピードを生かしてキレのある攻撃を生み出した。そのリーグとは異なる一発勝負のトーナメント戦、その決勝でゲームメークの大役を任されれば緊張で固くなってもおかしくない。だが富樫は平然といつものプレーをやってのけた。

大舞台でのプレッシャーについて「あまり分からない」と言う。「お客さんがたくさん入って、こういう雰囲気のほうがやりやすいというか、あまり緊張せずにできます。(NBA)サマーリーグで緊張しすぎたので、それに比べるとどの試合も全く緊張しないでやれます」

代々木第一には会場を赤く染める大勢の千葉ブースターが訪れた。彼らの期待が重みになることはなく、ただただ背中を押してくれる存在。富樫はあらためてそのサポートに感謝する。「観客動員数もリーグで1位ということで、僕たちはブースターに支えられています。こういう大舞台にもたくさんの方々が来てくれてすごい後押しになりました。ブースターのおかげで優勝できたと思います」

「チャレンジャー精神を忘れずに戦っていくことが大事」

富樫は大会を通じてアシスト王(平均4.5本)に輝き、得点ランキングでも3位(16.5得点)に入り、堂々の大会ベスト5に選出された。名実ともにトップポイントガードの仲間入りを果たした富樫は、優勝したことには「言葉にできないほどうれしい」と喜びを爆発させるが、自分のプレーにはまだ満足していない。

「安定できなかったところがダメでした。良くない試合が良くなさすぎました。しっかりチームをまとめなければいけないので、安定したプレーをしたいです」

富樫個人ではなくチームとして見ると、シーズン序盤の千葉は調子の振れ幅が大きかった。だが、13連勝を記録する過程でチームとして向上し、そしてオールジャパンでは強豪を次々と飲み込んで優勝を成し遂げた。『勝てている理由』を富樫はこう説明する。

「やらなければいけない時間帯がみんな分かるようになってきました。迫られた時の3ポイントシュート、緩んでしまった後のディフェンスなど、その大事なところの『スイッチ』がみんな分かってきたのかなと思います」

個人のパフォーマンスも向上し、ケガ人も復帰、勝負どころの嗅覚も鋭くなり、今のチーム状況は最高の状態と呼んでもいいだろう。それでも、リーグ再開に向けて富樫に慢心はない。「優勝はしましたが、経験の浅いチームです。チャレンジャー精神を忘れずに戦っていくことが大事だと思います」

千葉に初タイトルをもたらし、個人としても大会ベスト5に選出された富樫。驕らないその若武者の眼差しは、Bリーグ初代王者へとすでに照準を変えている。