「多くの選手がオフェンスは大好きだけど、ディフェンスはやりたくない」
2017年にNBAデビューを果たしたバム・アデバヨは、3年目の2019-20シーズンに不動の主力へと定着した。この年にヒートはNBAファイナルに進出し、6年目の昨シーズンにも再びNBAファイナルへと駒を進めている。センターだが機動力があってプレーエリアが広い、万能のビッグマンとしてオールスター選出2回と地位を確立している。
その彼が『Playmaker』に出演し、無口で内向的だった自分が母親の愛情を受けて育ち、バスケで道を切り開いてきた半生を語った。貧しい家庭で育ったが「僕は16歳ぐらいになるまで、自分の家が貧しいことに気付いていなかった」という母の献身に感謝するアデバヨは、NBAドラフトで指名される瞬間を母と共有できたことが何よりうれしかったと語る。
それと同時に、サマーリーグで一緒にプレーした選手がクビになる姿を見て、NBAのビジネスを理解した。「クラブは選手の感情なんか気にしない。勝つことだけを考えている。そこで生き抜くには努力と犠牲、自分を追い込むメンタリティが必要なんだ」
その一方で、NBAに定着した選手が陥りがちな考え方からアデバヨは距離を置き続けている。「NBAはエンタテインメントビジネスで、華やかなプレーの裏に何があるかをみんな忘れてしまう。多くの選手がオフェンスは大好きだけど、ディフェンスはやりたくない。試合が終わって気にするのは得点だ。それでも僕はディフェンスのメンタリティを忘れない。だからディフェンシブ・プレーヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得したいんだ」
昨シーズンのディフェンシブ・プレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのはグリズリーズのジャレン・ジャクソンJr.で、アデバヨは投票で10位、辛うじてオールディフェンシブセカンドチームに入っただけだった。万能型ビッグマンのアデバヨより、より屈強なフィジカルを持ちサイズのあるビッグマン、あるいは前からプレッシャーを掛けられるガードと、『エンタテインメント・ビジネス』で見栄えのする選手が有利な傾向が強い。
それでもアデバヨは自分のスタイルを貫きながら、この目標を達成しようとしている。「安定したパフォーマンスを見せたい。それが一番難しいことだと思うから」と彼は言う。
「この4シーズンで僕とヒートはNBAファイナルに2回進出している。僕はこのことを世間がもっと評価すべきだと思うよ。2回ともダークホースと見られていて、今回はロスターの6割がドラフト外の選手というチームだった。最初は完全にまぐれだと思われていたし、今回だって『ヒートはもう厳しい』と思われているだろうね。でも、僕らはまたやってみせるよ。そうやって人々を驚かせるんだ」