主導権を終始握られる展開、終盤に真価を発揮
アルバルク東京vs栃木ブレックスの第2戦。A東京に主導権を握られた栃木だが、終盤の勝負どころで最大の集中力を見せて逆転に成功し、63-62とクロスゲームを制した。
昨日の第1戦ではスロースタートが響いて62-79と敗れた栃木は、立ち上がりから攻守ともにアグレッシブな動きを見せるも、A東京の抜け目ない試合運びを上回ることができない。馬場雄大に前半だけで2つのダンクを浴び、激しいディフェンスからターンオーバーを誘発され、それを確実に速攻へ繋げられてA東京に主導権を握られる。
第2クォーター序盤に、アンドリュー・ネイミックがオフェンスリバウンドを奪い、渡邉裕規の3ポイントシュートで一時はリードを奪うも、安藤誓哉にすぐさま決め返され、要所で竹内譲次とアレックス・カークがブロックショットを見せるなど、主導権を奪うことができない。栃木はストロングポイントであるはずのオフェンスリバウンドで6-8、速攻での得点で2-9とA東京にお株を奪われ、26-33とビハインドを背負って前半を終えた。
後半に入ると、互いに24秒バイオレーションを誘発し、シュートがエアボールになるなど、インテンシティの高いディフェンス合戦を繰り広げ、このクォーターは11-11と超ロースコアの展開に。こうして迎えた最終クォーター開始2分、栃木はライアン・ロシターのミドルシュートが決まり2点差に詰め寄ったが、馬場の速攻や竹内譲次の3ポイントシュートを許すなど、何度も跳ね返された。安藤の3ポイントシュートで8点差とされたところでオフィシャルタイムアウトを迎えた。
あきらめない気持ちが生んだラスト5分の逆転劇
A東京の指揮官、ルカ・パヴィチェヴィッチも「今日の試合に関しては長い時間、我々がペースを握っていた」と語ったように、ここまでは完全にA東京が試合を支配していた。だが栃木はここから驚異的な粘りを見せる。
セカンドチャンスからロシターが3ポイントシュートを沈めて食い下がると、鵤誠司も続き、ようやく流れを自分たちに呼び込む。残り2分13秒にロシターがステップバックの難しい3ポイントシュートを沈めて同点に追い付くと、直後のオフェンスで竹内公輔がゴール下を決めて、ついにリードを奪った。
そして残り15秒、栃木はショットクロック3秒エンドからのスローインの場面を迎える。ここでA東京はセンターの動きにつられたことにより、トップにいる遠藤祐亮のマークを離してしまう。ノーマークでパスを受けた遠藤は、落ち着いて3ポイントシュートを沈め、この日最大となる5点のリードを奪った。その直前のオフェンスではシュートを馬場に叩き落とされていた遠藤だが、ここでは同じ馬場のチェックよりも速いリリースで見事に決めてみせた。
田中大貴に3ポイントシュートを許し、63-60と3点差で残り6秒の場面、セカンドチャンスからミルコ・ビエリツァが放ったシュートは2ポイントとなり、決められてもなお1点のリードを保った栃木が辛くも逃げ切った。
指揮官も笑み「今シーズンでもベスト3に入る勝利」
勝利した栃木の安齋竜三ヘッドコーチは「昨日は本当に応援してくれているファンの皆様に申し訳ない試合で、新年早々に2試合続けてやるわけにはいかないということはチーム全体で感じていました。楽しんでもらえるようなゲームができて良かった」と安堵の表情を浮かべた。
何度詰め寄っても追い付けない展開が続き、心が折れてもおかしくはない状況だったが、栃木は不変のメンタルで戦い続けた。安齋コーチは、「昨日はメンタルが駄々崩れの状態で、多分みんなはそれを恥ずかしいと思っていた。1試合やりつづけるという意地とかプライドがあった結果、今日のメンタルの安定に繋がったと思う」と最後まで粘り続けられた理由を説明した。
一方、敗れたA東京のパヴィチェヴィッチヘッドコーチは「最後の勝負どころで栃木さんが力を発揮した」と総括した。栃木のストロングポイントは消したし、シュートセレクションもA東京のほうが上。指揮官も「オフェンスでは数多くチャンスはあった。逆にロシターにタフショットを決められた」と、決めるべきシュートをきめきれなかったことを敗因に挙げた。
会心の逆転勝利に、普段はあまり表情を表に出さない安齋コーチも、試合終了直後には満面の笑みを浮かべた。「僕がうれしくても仕方がないので、いつもは厳しい顔をしてるんですけど、東京さんに勝つということは、そこまでの準備だったり、しっかりしていないと勝てるチームではないので、今シーズンでもベスト3に入る勝利だと思います」
栃木とA東京の新旧王者同士の対戦は1勝1敗の痛み分けとなった。今後も名勝負が繰り広げられるに違いない。