自分たちの得意な戦い方に持ち込むゲームコントロールが重要
前回のワールドカップで3位、東京オリンピックとユーロバスケで2位と上位に食い込むフランスですが、優勝にはたどり着けずにいます。それでも今大会は若いメンバーで臨むアメリカやポイントガード陣が離脱してしまったスペイン、世代交代の最中にいるオーストラリアなど、他国の状況を考えると大きなチャンスです。
多くのNBAプレーヤーを抱えるフランスは個人能力が高いだけでなく、厳しい状況でもチームとしてタフに戦える結束力を持ちあわせ、粘り強く勝利を拾えるチームです。国際大会の経験も豊富なだけに万全の体制で臨む、と言いたいところですが、エースのエバン・フォーニエのコンディションに不安があります。
昨シーズンはニックスでローテーションから外れたフォーニエは、27試合で459分しかプレーしていません。フィールドゴール成功率もキャリア最低となる34%と、試合に出れないことでパフォーマンスが低下しています。また近年のフランスは多くの若手有望株がNBAに挑戦していますが、プレータイムをつかめずに伸び悩むことが多く、代表にも呼ばれないケースが増えてきました。逆にNBAからヨーロッパに戻ったエリー・オコボやガーション・ヤブセレが活躍しており、試合勘の重要さを物語っています。
またケガもあって代表チームから離れていたナンド・デ・コロが戻ってきましたが、36歳になってもシックスマンとして試合の流れを変えられるのか、未知数な部分もあります。若手への移行はしたいものの、オフェンスはベテラン頼みの部分が大きく、蒸し暑い夏の東南アジアで最後までスタミナが持つのかどうかが不安要素になっています。
オフェンス面には不安が残る一方で、ルディ・ゴベアがゴール下を封鎖し、ヤブセレのようなフィジカルに強い選手が揃うディフェンスは世界最高レベルで、ハードなディフェンスからカウンターに持っていくことでリードを得る戦い方をしてきます。ディフェンス3秒ルールがなく、シュートがリングに1回あたった時点で弾き出してよいなど、FIBAルールにおいてはビッグマンの価値が高まることもあり、フランスが誇る『高さ』は脅威です。
フランスの初戦はガード陣に若いタレントが揃ったカナダです。フランスとは対照的にスピードを中心に平面での強さを持つチームだけに、正面からぶつかり合うのではなく、自分たちの得意な戦い方に持ち込むゲームコントロールが重要となります。ベテランチームらしくスローダウンして高さの利を生かし、イニシアチブを取る戦いができるかどうか、この初戦が優勝への試金石になりそうです。
来年のパリオリンピックに向けて、ジョエル・エンビードやビクター・ウェンバニャマなど今大会には不参加のビッグネームの動向が話題になりますが、現行ロスターで長年培ってきたチーム力がベースにあることは間違いなく、今大会で自分たちの戦い方が正しいことを確認し、金メダルに向けた第一歩にしたいところです。