川村卓也

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

通算2000得点「1点でも取ってチームに貢献できるなら」

横浜ビー・コルセアーズは昨日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦し、延長の末に99-106で敗れた。川村卓也は持ち前の勝負強さとシュート力を披露し、22得点を記録。第4クォーター残り59秒、2点ビハインドという場面でフリースローを2本決め、この1投目を決めた時点でBリーグ通算得点が2000に乗った。

Bリーグ通算145試合目での達成となり、ここまで約2年半で1試合平均13.8得点を稼いできた計算になる。外国籍選手が得点ランキング上位を占めるBリーグの中で、日本人選手がこれだけコンスタントに得点を稼ぐことは容易ではない。それでも本人は「アナウンスしてもらって『そうだったのか』と思っただけです」と2000得点に特別な感情は抱いていなかった。

川村は周囲の協力があってこその2000得点であることを強調する。「得点に絡み、チームが得点を取るシチュエーションを演出し、チームプレーの中で2000点取れたのは、コーチの采配を始め、周りの選手のアシストというのがあって達成できたものです。僕の中ではまだ通過点ではあるんですけど、1点でも取ってチームに貢献できるのであれば重ねていきたい」

横浜は2年連続で残留プレーオフを戦うなど、決して強いチームとは言えない。それでも約3000人の観客動員数を誇るBリーグでも屈指の人気球団だ。勝ちが伴わなくてもファンが足繁くアリーナに足を運ぶ理由の一つは、今シーズンも24点差の逆転劇を演じたように、川村なら何かやってくれるという期待感があるからだろう。

「僕が点数を決めるシチュエーションを楽しみに来てくれる方も少なからずいると思っている」と川村にも自覚がある。昨日の試合でもブランドン・コストナーがファウルアウトになってからの第4クォーターのラスト4分で8得点とオフェンスを引っ張り、脅威の粘りを演出した。

川村卓也

「106点取られたら、僕らの得点能力では勝てない」

指揮官のトーマス・ウィスマンは試合後、「第4クォーターを終えた時点で97点とられているが、私の中ではディフェンスはしっかりやれていたというイメージがあった。止めるところは止めて、ディフェンスからオフェンスという流れができていた。自分たちが前進してると思う」という収穫を語った。

しかし川村は、106失点という事実をポジティブに受け止められなかった。「106点取られたら、僕らの得点能力では勝てない。彼らはオフェンスで勝ちたいチームなので、彼らのゲームになっている。60点から80点のゲームをしないと、ディフェンスのゲームをやったとは言い難い」

新戦力のコストナーが39得点を挙げる活躍を見せたのは明るい材料だ。川村も「新しい選手がチームに貢献してくれるのは非常にありがたいことですし、プラスな材料です」と同調するが、それを手放しで喜ばないのも彼らしいところ。「これだけインポートプレーヤーが出たり入ったりしてくると、チームが出来上がるのが一度ゼロに戻ってしまう。練習内容も一からフォーメーションに取り組まないといけないですし、それはプレシーズンの時にすべて終わらせてなければいけない」という川村の言葉はもっともだ。

外国籍選手の力はチームの強さに直結する。必要に応じて選手を入れ替えるのは大事だが、横浜は開幕時点で登録されていた外国籍選手がすべて退団し、入れ替わった。チームケミストリーを構築するには時間を要するし、他のチームからの遅れを取り戻すのは容易ではない。

それでも「日本人選手たちは自分たちのやるべきことをフォーカスしたうえで、アジャストしようと努力しています。足踏みしながらも前進しようと思っています」と川村は前だけを見る。

通算2000得点を記録し、延長戦にもつれる白熱した試合を演出したが、川村の表情は終始浮かないものだった。それは、敗れたという結果を正面から受け止め、ブースターへ勝利を捧げられなかった負の感情があるからだ。「何はともあれ結果が出ないと、ブースターの意見や思いは覆せないので。結果を勝ちとるためにもっと努力して、僕がやるべきことをやれば、いろいろ良い方向に向くんじゃないかと信じてやっていきます」

新年初戦を勝利で飾れなかった横浜だが、巻き返しを図る序章となり得る内容ではあった。ブースターのために、結果にこだわる川村の挑戦はこれからも続いていく。