ザイール・ウェイド

ケガでGリーグチームを解雇された後、アフリカに新天地を求める

ドウェイン・ウェイドの息子がバスケをやっていれば、間違いなく注目を浴びる。ザイール・ウェイドは21歳になった。かつてヒートのコートには、試合前にボールで遊ぶ幼い彼の姿があった。高校ではレブロン・ジェームズの息子ブロニーとチームメートとなったことが話題となった。

ただ、父親と同じDNAを持っていても、成功が約束されているとは限らない。最初のつまずきは大学進学の時で、新型コロナウイルスのパンデミックにより大学バスケが大混乱に陥っていた時期、彼はNCAA1部強豪からのオファーを得られず、Gリーグでプレーすることを選んだ。

彼はジャズの傘下にあるソルトレイクシティ・スターズに練習生として加入し、すぐに正式に選手登録された。ジャズは父ドウェインが共同オーナーを務めるチームであり、「親の七光り」と呼ばれることを理解しながらも、コート上では誰もが横一線からのスタートで、競争の中で自分の本当の評価を築き上げると誓っていた。

しかし、2021-22シーズンのGリーグでデビューして早々、膝のケガで長期戦線離脱を余儀なくされ、チームから解雇された。こうして彼は、NBAを目指す若い世代の『出世コース』から外れることになった。

それでも、彼の精神力の強さとバスケへの愛情は父親譲りで、現役を引退して事業を始めていた父親を手伝いながら、トレーニングは怠らなかった。そしてやって来たのが、今年に入ってすぐのBAL(バスケットボール・アフリカ・リーグ)のコンバインで、ケープタウン・タイガースとの契約を勝ち取った。

当時、ザイールはこう語っている。「誰もBALのことを理解していない。アフリカってだけで素通りして、分かったふりをしてしまう。でも、ここは素晴らしいリーグだよ。チームのスタイルも、チームメートのライフスタイルも、僕にとっては新しいけど馴染みやすい。僕の名前はアフリカに由来するから(ザイールはコンゴ民主共和国のかつての名称)、それも関係あるのかもね」

ザイールはこのチームで控えガードとしてプレーし、チームのプレーオフ準々決勝進出に貢献した。チームのエースではなかったし、突出したスタッツを残したわけでもないが、1年以上のブランクを乗り越え、このレベルで十分やっていける実力を示した。

『The Athletic』の取材を受けたザイールは「BALでは素晴らしい経験ができた。長い目で見て、自分のキャリアを大きく助けてくれると思う」と語る。「今、僕は世界中を見渡し、それぞれのバスケがどのようにプレーされているかに注目しているんだ」

Gリーグでの挫折とアフリカでの経験から、自分がありのままでプレーし、コート外でも生活すればいいことを学んだ。「父と僕を比較する批評家に向けてプレーする必要はない。ただ自分らしく一生懸命にやればいい」とザイールは言う。

彼が次にプレーする場所はNBAではないだろう。ただ、偉大な父の足跡をそのままなぞる必要はない。バスケ選手として自分らしくプレーし、自分らしい努力をして自分らしいキャリアを築いていけばいい。それは父ドウェインにとっても、何よりの幸せだろう。

ザイールは言う。「僕にとっての彼は有名な選手じゃなく父親だ。いつもそうしてきたんだ」