吉田真太郎

オフシーズンの移籍市場において、群馬クレインサンダーズが辻直人とコー・フリッピンを獲得したニュースは大きな衝撃を与えた。群馬は新アリーナも完成し、2026年の『Bプレミア』参入に向けて地域に根ざしたクラブ運営の1つのモデルケースともなっている。チームの強化やクラブ経営においても積極的な動きを見せる、群馬の吉田真太郎GMにオフの補強や今後の掲げるビジョンについて話を聞いた。

「今シーズンは『Bプレミア』に向けて観客動員数を伸ばしていく必要があります」

――並里成選手の獲得や水野宏太ヘッドコーチの招聘、新アリーナのオープンなど、転換期となった昨シーズンの振り返りをお願いします。

チームとしてはチャンピオンシップ出場を目標にしていましたが、29勝31敗の東地区5位となり、そこに行けなかったので悔しいシーズンになりました。一方、課題が明確に見えたシーズンでもあったので、そこはプラスにとらえています。 クラブとしてはオプアリ(OPEN HOUSE ARENA OTA)が完成して、6試合とも超満員で盛大に開催できたのは今後に繋がるとても良かった点となりました。

――チームとして課題が見えたとのことですが、良かったところや改善すべきところを教えてください。

まず良かった部分としてはチームで戦うことができました。数字上ではアシスト数がリーグトップだったように、水野ヘッドコーチが目指すチームバスケのスタイルが確立されていきました。一方で3ポイントシュートの確率であったり、リバウンドが取れなかったり、停滞する時間帯を作ってしまったりと、2023-24シーズンに向けてしっかり補強していかないといけないということが明確になりました。

――今の話を聞いて、まさにそのポイントをこのオフに補強したというのを感じました。

そうですね。対戦相手にも「群馬は外がない」と思われてピック&ロールに対してもアンダーされてしまうことが多かったので、辻(直人)選手が来ることで、スペースも広がって昨シーズンより効果的なバスケが展開できるのではないかと思っています。コー(フリッピン)選手に関しては大舞台で強いというのもありますし、強豪クラブにいたので、勝者のメンタリティを持っているのは間違いないです。彼のようなメンタリティを持った選手がクラブにいるのはすごく重要なことです。

――2選手は実力も当然ですが、人気も高い選手です。その辺りも意識して獲得されましたか?

もちろんです。他のクラブも同じだと思いますが、今シーズンは大きいテーマとして『Bプレミア』に向けて観客動員数を伸ばしていく必要があります。その状況下で、この2人はBリーグの中で相当人気がありますので、集客にも大きなインパクトがあると思います。オプアリで観ているファンの皆様をワクワクさせてくれる、お祭り男2人が加入したので楽しみにしていてください。

――編成に関して、水野ヘッドコーチの意向はどの程度反映されましたか?

水野ヘッドコーチと2人で話して決めました。ただ、人気がある選手を獲得したわけではなく、ヘッドコーチが考えるバスケを遂行できる力を持った選手を選びました。3ポイントシュートを武器にできてスター性のある選手は、現実的にはほとんどいません。辻選手が来てくれることになり、これ以上ない補強だと思います。

――辻選手は川崎ブレイブサンダースに長く所属していたこともあり、フリッピン選手同様、強豪チームの文化を作ってきた選手となります。若手選手も多い群馬にとって、良い影響を与えてくれそうですね。

それは間違いないですね。私たちはまだ歴史の浅いクラブなので、そういったメンタリティを持った選手が来ることによって、大きくステップアップできる可能性があります。若手に対する影響だけでなく、チームスポーツとして重要なことを体現できる選手として、お客様にも大きなインパクトを与えてくれるという期待もあります。

――辻選手もフリッピン選手も名実ともに評価が高く、どのクラブも獲得したいと考える選手だと思いますが、契約は一筋縄ではいかないこともありましたか?

コー選手は、ファイナルMVP選手ですし引く手数多だったと思いますが、私たちの掲げるビジョンに賛同してくれて、成長しているチームというところにも魅力を感じてくれて決断してくれました。辻選手はチームの顔となる選手ですので、当然簡単ではありませんでした。ただ、彼自身も自分のバスケットボールキャリアの中で「誰とやるか?」となった時に「並里とプレーしたい」という気持ちがあり、それが決断してくれた大きな理由となりました。最終的にはクラブの将来性とアリーナの環境にも期待してくれて、ウチのクラブの新しい歴史作りに賛同してくれました。めちゃくちゃ感謝しています。

――並里選手や辻選手はリーグの中でも十分に力を証明しています。若手選手の成長がチームの鍵になると思いますが、若手に対する期待はいかがでしょうか?

テル(菅原暉)とアレン(八村阿蓮)がどこまで飛躍するかというのが、今シーズンのクラブの結果を大きく左右すると思っていますので、この2人には大きな期待があります。1試合を通して誰が出ていても安定したパフォーマンスを出すことができずに崩れるというのが、昨シーズンの課題の一つでした。今シーズンの起用方はまだわかりませんが、様々な組み合わせが考えられる選手がいると思います。例えば並里、辻、八村とベン(・ベンティル)、ケーレブ(・ターズースキー)をスタートで起用して、ベンチからトレイ・ジョーンズとマイケル・パーカー、コーが出てくるという選択肢もあります。

新たに加入してくれた木村(圭吾)も若手でアグレッシブにプレーできますし、テルのプレータイムが増えればチームとしてタイムシェアが安定します。圭さん(五十嵐圭)のシュート力は大きな武器ですし、活躍したらファンの皆様は盛り上がると思います。ケンゴ(野本建吾)、星野(曹樹)はオフ期間にとても努力しているのでチームに良い影響を与えてくれると思います。考えれば考えるほど、面白い展開になっていくのではと思っています。40分間チームで強度が高く、安定したパフォーマンスをするためにも、テルとアレンのステップアップは大きな鍵になります。