文=鈴木健一郎 写真=本永創太

短かったプレータイム「出来が悪くて下げられました」

『オールジャパン2017』、昨日の準決勝で栃木ブレックスは千葉ジェッツに完敗を喫した。昨年は準優勝ということもあり、優勝に強い意気込みを持って臨んだ大会だったが、無念の敗退となった。

敗因はいろいろと挙げられるが、千葉がどうこう以前に栃木が『ブラックアウト』してしまったことがすべてだ。攻めと守り、内と外、先発とセカンドユニットと、どの面を見てもバランスが取れている栃木は、本来であればリーグでも屈指の安定感を誇るチーム。ところが昨日の一戦では足が動かず、持ち味をまるで発揮できなかった。

田臥勇太は「自分たちのバスケットが全くできずに、相手にやられてしまいました」と試合を振り返る。「出だしから相手の勢いに押されてしまい、ディフェンスからリズムをつかむこともできず、それが点差に表れたと思います」

立ち上がりから劣勢に立たされる状況で、田臥もポイントガードとしてその流れを押し戻すことができなかった。17分と短かったプレータイムについて「自分の出来が悪くて下げられました」と説明する。

出だしで圧倒されたのは、コンディションや技術ではなく気持ちの問題。「オールジャパンは短期決戦で、いかに準備できるかがポイントなので、それだけ気持ちをしっかりと作っていかなければならないと思います。そういう意味では完全にやられてしまいました」

Bリーグでは同じ東地区に属する千葉。対戦が決まった時点で田臥は「乗せてしまうと本当に強いチーム」と警戒していたが、結局やられてしまった。

「うまくリズムに乗れない時というのは、相手にポンポン走られたり、簡単な連携ミス、細かいスイッチのミスだったりとか、ゲームプランに沿ってできていないことがあります。相手が強いチームになればなるほど、そういう部分を突いてきて勢いを付けられてしまう。千葉に対してはオフェンスでどういうより、ディフェンスで勢いを止められればよかったのですが、リバウンドでも負けてしまいました」

「個人としてチームとして、どう次に向かっていくか」

試合終了を告げるブザーが鳴ると、どの選手も悔しさと失望を隠そうともせず引き上げていった。この時のチームメートの表情を思い出しながら田臥は言う。「この敗戦を重く受け止めるとともに、次にどうつなげるかですね。悔しくないヤツなんて一人もいないです」

「それでも終わってしまったので、この結果をどう次につなげるかにフォーカスして、個人個人もそうですし、チームとしてどう次に向かっていくか。そしてそれをいかに続けていくか。負けた後はどの選手にも悔しさがあるので、やり返そうという気持ちがあります。でも、単発で終わらずにその気持ちをさらに次へとつなげていかないと敗戦の意味がないと思うので。そこはキャプテンとして、状況を見ながらそういうチームを作っていくつもりです」

負ければ終わりのトーナメントでの敗戦は、内容を振り返る意味もない。それでもあえて、この試合での収穫を聞くと田臥はこう答えてくれた。「ベンチから出てくるメンバーが最後まで必死になって戦ってくれたことです。点差がついてもあきらめずに戦う気持ちを見せてくれたので、それは収穫だと思います」

注目された富樫勇樹とのポイントガード対決では後手に回ってしまった。13歳年下の富樫についてはこう語る。「今シーズンは特に、メインのポイントガードとしてのびのびとやっていて、シュートもパスも彼の持ち味を毎試合存分に発揮してる印象があります。富樫選手を始め、みんなに激しくのびのびとプレーさせてしまいました」

どんな形であれ、とにかくオールジャパンは終わってしまった。富樫と同じチームでプレーするBリーグオールスターゲームを挟みつつも、シーズン後半戦に向けてまた仕切り直しとなる。「まだまだ試合はたくさんあるので、下を向いてはいられないです」と田臥は言う。「後半戦の最初は千葉さんなので、しっかりと準備して、今度は同じ結果にならないようにしなきゃいけないと思っています」

1月18日、ホームゲームでの千葉戦からBリーグが再開する。一足早く17日には仙台89ERSとアルバルク東京が、そして18日には川崎ブレイブサンダースとサンロッカーズ渋谷の対戦も組まれている。『因縁』は試合をよりエキサイティングなものにしてくれる。明日のオールジャパン男子準決勝はもちろんだが、Bリーグ再開が今から待ち遠しいのは私だけではあるまい。

奇しくも『リベンジマッチ』となる18日の試合でどんなパフォーマンスを見せられるか。栃木ブレックスの、そして田臥勇太の真価が問われる一戦となる。