カイル・アンダーソン

「そのスタイルをみんなが気に入って、チーム全体に波及すればベストだね」

カイル・アンダーソンは中国の国籍を取得し、ワールドカップに出場する。すでに中国入りをしている彼は、現地の『CBV』に出演し、中国代表としてプレーすることに「僕の曽祖父は中国出身だから、自分のルーツの国を代表することになる。曽祖父もきっと喜んでくれているに違いない」と語った。

彼によれば、中国代表が最初に接触してきたのは今年の初め。その時はティンバーウルブズでのプレーに集中しており、代表についてはシーズン終了後に考えることにした。中国のテレビ局がミネソタまで彼の意思を確かめようとやって来た時も、「もしそうなれば光栄だけど、決めるのはまだ先のこと」と回答している。

ティンバーウルブズはプレーオフのファーストラウンドで敗れ、4月下旬にシーズンが終わった。アンダーソンは家族やウルブズと相談した上で、最終的に1週間後に中国代表に加わる決断を下している。

「僕にとっては『夏もバスケをやろう!』という子供っぽいアイデアだった。ただ、バスケをプレーするのはいつだって楽しいけど、今回の選択にはそれ以上の意味がある。国を代表してワールドカップを戦うという機会だからね」

意外なことに、アメリカ代表からもオファーがあった。正式なオファーではなく、トレーニングキャンプの参加を求める打診ではあったが、その先にアメリカ代表入りの道があったのは間違いない。それでもアンダーションは「もう心に決めていたし、家族とも話していた」との理由で、中国代表入りのプランを変えなかった。

アンダーソンの母親は、もう何年も前から中国国籍に必要な情報を集めるために、何度も深圳や他の都市を訪れていた。母の努力を無駄にするわけにはいかない、という思いも彼にはあった。

「2018年には僕も深圳を訪れている。母は自分の父親や祖父の中国での記録を調べ、血縁者を探していた。母方の祖父はジャマイカに移住して家庭を築き、アメリカへと移った。だから血縁者を探すのは大変だったし、見つけても受け入れてもらえないんじゃないかとも思った。でも、実際に会ったら笑顔で歓迎してくれた。これは素晴らしい経験だったし、僕が中国代表になることでその価値は10倍になるね」

アンダーソンはワールドカップにただ参加するだけでなく、やるからにはベストを尽くして結果を残すつもりでいる。「送ってもらった試合映像をチェックしてから代表に合流するよ。そこからチームメートとの絆を作りたい。勝つために欠かせないのはチームワークだからね。ワンマンショーをやるつもりはないから、チームメートの誰が何を得意とするのか、そういうことはあらかじめ知っておきたい」

「そして、いつも通り自分らしくプレーするんだ。リーダーかどうかは別にして、僕は常にチームプレーを信じている。だからコートの中でも外でも仲間との関係性を大事にしている。30得点とか40得点を狙う選手もいるけど、僕は違う。自分のプレーをして、自分らしくありたい。自分のスキルと経験を、大量得点のためじゃなくチームの勝利のために使いたいんだ。僕はチームメートを巻き込み、楽しんでプレーしたい。そのスタイルをみんなが気に入って、チーム全体に波及すればベストだね」

アンダーソンは『助っ人』であり、勝てば英雄になるが負ければ批判に晒されるだろう。それを理解してもなお、彼はプレッシャーを感じないと語る。「バスケは僕が大好きな競技で、時には失敗することもある。自分がベストを尽くしたと分かっていれば、失敗を恐れる必要はないのさ。競い合って勝ちたいとは思うけど、それは僕にとって楽しいこと。生きるか死ぬかみたいなプレッシャーは感じないよ」