ゲイリー・ペイトン

「何でヒートに行かせて、彼を成功させてあげないんだい?

トレイルブレイザーズがデイミアン・リラードのトレード要求を受け入れたことが明らかになってから約1カ月が経過した。しかし、リラードがヒートへの移籍にこだわっていること、プレーヤーオプションを含めると残り3年で総額1億3500万ドル(約190億円)もの大型契約となることなど、複数の要因が絡み合い、状況は進展していない。

リラードはここまでプロ入りから11シーズン連続でブレイザーズの顔として奮闘してきた。彼の忠誠心が高く評価されている一方で、高額な契約が複数年残っている状況、なおかつ移籍先を限定するリクエストを行っていることに、自分勝手と批判的な意見も増えてきている。

それでも、殿堂入りポイントガードのゲイリー・ペイトンは、リラードの要求は妥当なものと主張する。ヒートの地元紙『The Sun Sentinel』の取材にペイトンはこう答えた。「みんなチャンピオンシップを追いかけるべきだ。何で俺たちがバスケットボールをプレーしているのか? もし、どこかに行って優勝するチャンスが生まれるなら、そこに行けばいい。俺はそうしてマイアミに加入した。その結果、何が起きたか見てごらんよ」

ペイトンとリラードには少なからず共通点がある。ペイトンは1990年のドラフト全体2位指名でブレイザーズの本拠地ポートランドと同じ北西部のシアトルを本拠地とするスーパーソニックスに入団し、生え抜きのスター選手としてチームを牽引した。1996年にはNBAファイナルにチームを導いたが、全盛期のマイケル・ジョーダンを擁するブルズに敗北した。その後も大黒柱として奮闘していたが、プレーオフで勝てなくなっていく中で愛着のあるチームとの決別を選択し、在籍13年目の2002-03シーズン途中に、レイ・アレンを含む大型トレードでバックスへと移籍した。

この時のバックスではプレーオフ1回戦負けに終わったが、翌年にペイトンはレイカーズへと加入。コービー・ブライアント、シャキール・オニールに加え、自身と同じくキャリアの晩年に差し掛かる中でチャンピオンリングを求めて入団したカール・マローンと共にNBA史上に残るカルテットを形成した。名選手を4人揃えたレイカーズは順調にファイナルまで勝ち進んだが、自分たちとは真逆のスーパースター不在の雑草集団であるピストンズの激しいディフェンスに圧倒され、1勝4敗でまさかの敗北を喫した。

レイカーズのカルテットはこの年限りで解体され、ペイトンは移籍したセルティックスでも結果を残せず、2005-06シーズンにヒートに加入した。当時、37歳になっていたペイトンはベンチスタートの脇役となっていたが、ドウェイン・ウェイドとオニールの2枚看板を揃えたチームを、持ち味の堅実なディフェンスで支えて遂にNBA制覇を達成した。

プロ入りからフランチャイズの顔として在籍したチームを離れ、優勝を追い求めてキャリアの晩年にようやく栄冠をつかんだペイトンだからこそ、リラードの気持ちは理解できる。そして、自身の悲願を叶えさせてくれたヒートへの移籍に賛成する。「デイム(リラード)はパット(ライリー、ヒート球団社長)の下でプレーしたい。これは彼にとって良い移籍だと思う。何でヒートに行かせて、彼を成功させてあげないんだい? 彼がヒートに加われば、リーグの勢力図も大きく変わると思う」

ペイトンと同じような道を辿り、リラードは理想とするヒートに加入することができるのか。引き続き、リーグ全体が状況の推移を注意深く見守っている。