文=鈴木健一郎 写真=本永創太

インサイドを力で支配し、ヘルプが来れば外のフリーを活用

『オールジャパン2017』準々決勝、シーホース三河と名古屋ダイヤモンドドルフィンズの『愛知県ダービー』は、立ち上がりからパワーと技巧で名古屋Dを圧倒した三河が、そのまま勝ち切った。

試合開始早々、アイザック・バッツがゴール下でマッチアップするジャスティン・バーレルを強引に押し切って得点を挙げ、パワーの差を誇示する。守備に回れば笹山貴哉のシュートを背後から叩き落し、チームに勢いを与えた。

さらには橋本竜馬のブレイクから金丸晃輔が余裕たっぷりで放った3ポイントシュートをしっかりと決めて10-5。名古屋Dはここでタイムアウトを取るが、三河の勢いは止まらない。パワーでインサイドを押し切ろうとするバッツを、巧みにサポートする桜木ジェイアールがポストプレーでは攻めの起点にもなり、名古屋Dがヘルプに来ればフリーになる金丸、橋本、比江島慎に素早くボールを回してシュートを打たせた。

ルーズボールに3人で飛び込む闘志溢れるプレーから、橋本がそのまま独走して19-6。比江島のシュートで23-9としたところで名古屋に早くも2度目のタイムアウトを取らせた。なおも攻守にエネルギッシュなプレーは続き、第1クォーターは比江島がブザービーターの3ポイントシュートで締めて31-14。

この怒涛の展開には理由がある。三河にとって、名古屋DはBリーグ西地区で唯一負け越している(1勝3敗)の相手であり、全員がここでリベンジしてやろうと燃えていた。特に大きかったのは、Bリーグ開幕直後の第2節での連敗。「相手が新しいチームでスカウティングが全くできず、ウチの選手は代表帰りで体調が悪かった」と振り返る鈴木貴美一ヘッドコーチは「同じカンファレンスで負けっぱなしではいられない。こちらもしっかりスカウティングして、選手もやりすぎるぐらいやってくれた」と今日のリベンジを語った。

「リードしても緩まなかったのはリーグ戦で負けているから」

第2クォーターも勢いは衰えず、前半で55-32と大差を付けた。「リードしても緩むことがなかったのはリーグ戦で負けているから」と試合後の鈴木ヘッドコーチは言う。

立ち上がりに圧倒された名古屋Dは、ミスも重なり積極性が出せない悪循環に陥った。あまり集中できないまま試合に入ってしまい、そのまま三河に押し切られた形だ。中東泰斗や張本天傑の3ポイントシュート、ジャスティン・バーレルの鬱憤をリングに叩きつけるようなパワフルなダンクなど見せ場がなかったわけではないが散発に終わり、4つのクォーターすべてで三河を下回る61-92の完敗で、オールジャパンの舞台から去ることになった。

きっちりとリベンジを果たした試合後、金丸は「しっかりやれば負けない相手」と自信を語った。今日の金丸は3ポイントシュート3本を含む13得点で勝利に貢献。長く着用していたフェイスガードがようやく外れたことも、動きの良い理由かもしれない。「ドクターからは3カ月と言われているんですけど、もうすぐ3カ月で、付けているのに飽きたので外しました」と笑う。

「オールジャパンでの戦いについて金丸は「トーナメントは緊張しますけど、やってて楽しい」と言う。「一発勝負なので相手もいろいろなことをやってきますが、それを短時間で攻略してシュートを決めることができたら楽しいです」。

8日の準決勝では栃木ブレックスを破った千葉ジェッツとの対戦。何度も対戦している名古屋Dとは対照的に、Bリーグでは対戦していない相手との顔合わせとなった。