ドリュー・ホリデー&ローレン・ホリデー

コロナ真っ只中の2020年に基金を設立、150を超える事業者をサポート

バックスのドリュー・ホリデーは、妻のローレンとともに熱心に社会貢献活動を行っている。新型コロナウイルスのパンデミック真っ只中にあった2020年の夏、2人は『Jrue and Lauren Holiday Social Justice Impact Fund』という基金を立ち上げ、コロナで影響を受けた有色人種が経営する企業を金銭面でサポートし始めた。

原資となったのは、コロナの影響で途中に長い中断期間があった2019-20シーズンの再開後のサラリー全額にあたる530万ドル(約7億円)だった。当時の彼は「自分の影響力を使って社会をどう良くできるかをずっと考えていた。そこに妻がアイデアを出してくれたんだ。大変な時期だからこそ、コロナの影響で苦しむ黒人のビジネスを支援するべきだと決めた」と語っている。

ドリューは2009年の1巡目17位でドラフト指名を受け、セブンティシクサーズで4年、ペリカンズで7年、そしてバックスで3年プレーしたベテランのポイントガード。基金を立ち上げたのは彼がペリカンズからバックスに移籍するタイミングで、コロナの影響で開幕が遅れた分、こちらの活動に注力することができた。そうして始まった2020-21シーズン、彼はバックスでNBA優勝を経験している。

妻のローレンは元アメリカ代表の女子サッカー選手で、北京とロンドンのオリンピック2大会で金メダルを獲得している。2013年に2人は結婚したが、2016年に大変な事態が起きた。第一子を妊娠していたローレンに脳腫瘍が見つかったのだ。ドリューは当時所属していたペリカンズの許可を取って無期限でチームを離れ、妻の介護に専念した。娘を出産した後に行われた手術は無事に成功し、ドリューもコートに戻って来た。ローレンは無事に回復し、2020年には息子にも恵まれている。

当時、妻の回復を見届けてチームに戻ったホリデーは、心境をこう語っている。「今の立場は自分が努力して手にしたもので、大変だと思っていたけど自分でコントロールできることばかりだった。でも、妻のことは僕にはどうにもできなかった。周囲の人たちにどれだけ感謝したらいいか分からないよ」

この時の出来事が、2人を社会貢献活動へと向かわせた。自分の力ではどうにもできない苦しい状況に陥った人たちを金銭面でサポートする活動を立ち上げて3年、ミルウォーキー、ロサンゼルス、インディアナポリス、ニューオーリンズの150以上の中小企業や非営利団体、教育施設に助成金を出してきた。

『ESPN』による『ESPYS』授賞式で、ドリューとローレンはこれらの活動により『モハメド・アリ・スポーツ・ヒューマニタリアン賞』を受賞した。

トロフィーを手に、ドリューはこう語る。「僕らが基金を設立したのはパンデミックがあり、人種的な問題が表に出てきた厳しい時期だった。あれから3年経ったけど、僕らの切迫感は変わらない。まだ表面しか見てないんじゃないか、と思うよ。厳しい状況に置かれながらも夢を追いかける勇気を持った人たちを応援したい」

そしてローレンはこう続ける。「名声や資産そのものに価値があるとは思いません。この世界を、ここで暮らすすべての人にとって良い場所にするために、人々にその力を与えるために使うつもりです」