デイミアン・リラード

写真=Getty Images

幼少時代にはオラクル・アリーナの記者室に忍び込む

トレイルブレイザーズのデイミアン・リラードにとって、ウォリアーズの本拠地オラクル・アリーナは、特別な会場だ。

オークランドで生まれ育ったリラードは、幼い頃に家族、友人たちと会場で試合を観戦していただけではなく、ハーフタイム時には記者室に忍び込み、用意されていたホットドッグを無断で食べ、ジュースを飲んだ。会場内の通路にも勝手に入って、ウォリアーズの選手たちからサインをもらった。当時は会場内のセキュリティも緩く、大人たちも寛容だったのだろうが、現代では絶対に実行不可能なことだ。また、父親が1999-00シーズンから3年間シーズンチケットを購入していたこともあって、頻繁に足を運んだ会場だった。

バスケットボール選手として名を馳せた彼は、2012年のドラフト全体6位でブレイザーズから指名され、NBA選手になる夢を叶えた。それからのオラクル・アリーナは、彼にとってライバルチームの本拠地になった。そして、ウォリアーズは2019-20シーズンから、ホームアリーナをサンフランシスコに建設中のチェイス・センターに移転する。

12月27日の試合は、ブレイザーズにとってオラクル・アリーナでのラストマッチだった。試合前、リラードは『Mercury News』に、「選手としてこの会場でプレーしている今より、子供の頃に遊んでいた時の方が、自分にとっては大事」と語った。そのリラードは、2000年に地元で開催されたNBAオールスターゲームを、会場で観戦したという。「(オールスターゲームの時には)1週間まるまる学校に行かなかった」と、当時を振り返ったリラードは、『ダンクコンテスト』史上に残る伝説として語り継がれている、ビンス・カーターによる『ダンク・ショー』の目撃者となり、ティム・ダンカンとシャキール・オニールがMVPを分け合ったオールスターゲームを目の当たりにした。

あれから18年が経ち、選手としてオラクル・アリーナでプレーした最後のウォリアーズ戦で、彼は決勝3ポイントシュートを決めた。NBA選手としてのリラードにとっては、王者との2連戦初戦をオーバータイムの末に勝てたことは大きかったに違いない。ただ、少年時代を過ごした思い出の会場では、来シーズンからウォリアーズの試合は行われなくなる。避けられない変化ではあるが、リラードは、一つの時代の終わりを実感したのではないだろうか。彼は試合後、こうコメントした。

「幼い頃には、この会場に来ていたんだ。ファンとしてこの会場に足を運べたこと、それから(NBA)キャリア7年目まで家族や友人の前でプレーできて良かった。彼らがアリーナを変えるのは残念だけれど、これは起こること。ファンとしても、選手としてもこの会場を経験できてうれしかった」