古橋正義

文=丸山素行 写真=鈴木栄一

タフショットを決められ「もはや笑ってしまう」

ウインターカップ男子準決勝、福岡第一vs桜丘の一戦は、大会屈指のスコアラー富永啓生に前半で31得点の大爆発を許すも、徹底したダブルチームによって後半をわずか6点に封じた福岡第一が103-72で勝利した。

この試合、富永のマークを任されたのは古橋正義だった。「僕はディフェンスが一番得意なので、相手のエースを止めるのが僕の役割です」と言い放つ。

その自信通り、古橋は富永を徹底マークし、タフショットを打たせ続けた。だがこの日の富永のシュートタッチは絶好調で、古橋がどんなにタフな状況を作っても、ボールはネットに吸い込まれていった。

いくらシュートの調子が良くても、それが1試合続くことは少なく、いずれ成功率は落ちてくるはずという期待を抱くものだ。だが当の古橋にそこまでの心の余裕はなかったという。

「空けたら決めてくるんで、そんな期待はないです。落ちる期待というより、むしろ自分のディフェンスが効いてくれっていう期待をしてるくらいです」

全国レベルのスコアラーは、コンスタントに20得点以上を記録することも多く、富永もそのうちの一人だ。「富永君なんかは20点くらい取られても仕方がないという思いをみんなが持っています。まあ前半だけで30点取られちゃったんですけど(笑)」と、7本の3ポイントシュートを許し、31得点を奪われた事実に苦笑いを浮かべた。

それでも、ディフェンスが得意な古橋はそうしたトッププレーヤーとのマッチアップを楽しんでいる。

「やっぱうまいなあって。でもディフェンスが好きなので、マークについて楽しいとも感じます。ディフェンスを頑張って難しいシュートを決められたら『やべー』(感嘆)って。やられたらダメなんですけど、もはや笑ってしまったり」

古橋正義

桜丘のゲームプランを崩した3ポイントシュート

ディフェンスでは富永を止められなかった古橋だが、オフェンス面では大きな仕事をやってのけた。桜丘はクベマジョセフ・スティーブのインサイドをケアするために、昨日の準々決勝の報徳学園戦で、3ポイントシュートが6本中1本しか決まらなかった古橋のマークをあえて離し、シュートを『打たせる』作戦を取った。だがその作戦は失敗に終わる。

「昨日は不調でチームに迷惑をかけっぱなしだったので、今日は決めるしかないと思っていました。迷わず打って入りました」と言うように、古橋は6本中4本の3ポイントシュートを沈め、桜丘のゲームプランを崩壊させた。富永の爆発があったにもかかわらず、前半を2点ビハインドで終えられたのは、古橋の貢献度があってこそ。

後半に敷いた2-2-1のオールコートプレスが決め手となり、第3クォーターを31-9と圧倒した福岡第一が100点ゲームで決勝へ駒を進めた。「自分たちのバスケをやって、自分の役割をしっかりやって、ベンチメンバーも出て20点差、30点差をつけて勝ちたいです」と、意外にも強気な発言が聞けた。

昨日の準決勝では得意のディフェンスではなく、オフェンス面で勝利に貢献した古橋。ベンチメンバーを出場させた上での優勝を勝ち取るために、今日は最高のディフェンスを披露してくれるはずだ。