中部第一

文=丸山素行 写真=野口岳彦

インサイドの要2人が4ファウルの緊急事態

ウインターカップ男子のベスト4進出を懸けた中部大学第一と報徳学園の一戦。ブバカー・ンディアイエとバトゥマニ・クリバリの留学生2人が、第3クォーター半ばを過ぎた場面で4ファウルを犯す緊急事態を迎えた中部大学第一だったが、その後はファウルを我慢し粘り強くリードを保ち、81-71で逃げ切った。

中部大学第一の常田健監督が試合後、「今シーズンでワーストじゃないかな」とコメントしたように、序盤からブバカーとバトゥマニがファウルを連発し、周りも連続でターンオーバーを犯すなど、ピリッとしない展開が続いた。それでも強度の高いディフェンスから速攻で加点する得意の形も見られ、41-31と10点をリードして前半を折り返した。

ハーフタイムを挟んでもなかなか調子が上がらず、第3クォーター残り4分を切ったところでブバカーが、その40秒後にバトゥマニがそれぞれ個人4つ目の4ファウルをコールされてピンチを迎えた。だが「留学生にファウルをさせたくないということと、ゾーンプレスに対しターンオーバーが多いというデータが出ていた」との理由から、中部大学第一はオールコートで前から当たり、ゾーンディフェンスでインサイドの負担を減らした。これが功を奏し、報徳学園のオフェンスを停滞させ、最後までリードを保った。

「ああいう状況で使うつもりはなかった」と常田監督は苦肉の策であったことを明かす。「あそこで強引にインサイドをやられたほうが苦しかったので、5ファウルで抜けなかったことが一番助かった。一番嫌なのは留学生が退場することなので」

報徳学園の田中敬監督は「もちろんファウルが込んでいるから中を攻める選択肢もありました」と言う。それでも「ウチの戦い方は中が軸。そこから外への展開なので、ディフェンスが寄れば外に出すリズムは変えたくなかった」と、インサイドを突けなかったシーンを振り返った。

中部大学第一のキャプテン、中村拓人も「少しヤバいなと思った」と2人がファウルトラブルに陥った瞬間を振り返ったが、「前半にブレイクで点数が取れたのが最後の貯金になった」と、苦しみながらも前半で得た2桁リードが決め手となったと語った。

中部第一

「勝てたのが奇跡に近い状態です」

夏のインターハイでは決勝で開志国際に敗れる悔しい結果に終わった。それでも、U18日本代表の活動のために中村が欠場した上での準優勝ということもあり、中部大学第一は優勝候補に挙げられている。結果的にベスト4へ進出することができたが、昨日のパフォーマンスについて、「ミスが立て続けに起きた部分があり、そこは改善しなきゃいけない」と中村は反省する。

夏を上回って日本一になるには、本来のプレーを取り戻す必要がある。「自分たちのプレーのルールをもう一度確認して、その場に応じたルールを5人全員が理解した上でプレーすることが次につながります」

常田監督は「2人ともファウルがかさんでしまうというのは今までにない状況だった。勝てたのが奇跡に近い状態です」と酷評したが、危機的状況を迎えながらも勝利できたことは、また一つチームのレベルが上がったとも言える。最大のピンチを脱した中部第一はチームとしての完成形に限りなく近づいた。最後の冬にベストメンバーで臨む、彼らが見る景色は果たして。