ジョーダン・プール

ウォリアーズは優勝の可能性を高めるが、『世代交代』は頓挫

ウィザーズは解体へと舵を切り、エースのブラッドリー・ビールをサンズにトレードすることを決めた。その交換要員となったクリス・ポールは、38歳となる今もポイントガードとして高い実力を持ち、キャリア初のNBA優勝に執念を燃やしている。ウィザーズはその彼を第3のチームへ送ることに。その相手はウォリアーズだった。

ウィザーズがポールの行き先を決めたことで、ビールの移籍はウォリアーズを含む3チーム間トレードとして正式決定となる。ウォリアーズはジョーダン・プールとライアン・ロリンズ、2030年の1巡目指名権、2027年の2巡目指名権を放出し、クリス・ポールを獲得する。

ジョーダン・プールは昨夏の時点で、来シーズンから始まる4年1億4000万ドル(約200億円)の大型契約をウォリアーズと結んでいた。それでも、開幕前の練習中にドレイモンド・グリーンと口論し、グリーンに殴られる事件が起きている。これはチームワークを壊すもので、シーズンにも響いたと指揮官スティーブ・カーは後に認めている。そしてプールは、良くない形で注目を浴びたことでメンタルのバランスを崩してしまった。キャリアハイの平均20.4得点を挙げたものの、得点ばかりを狙ってディフェンスではハードワークせず、個人プレーに走るようになった。ステフィン・カリーでさえハードワークするウォリアーズでは許されないプレーだ。

一方でドレイモンド・グリーンはチームに不可欠なディフェンダーであり、リーダーであることをプレーで示した。33歳の彼は今オフに契約が切れるが、プールを放出したウォリアーズは彼と再契約するだろう。

ウォリアーズが指名権を放出したのは、クリス・ポール獲得のためというよりは、不良債権と化したプールの大型契約を引き取ってもらうため、という意味合いが強い。ただ、ポールは新天地で重要な役割を果たすことになるだろう。エースのステフィン・カリーは35歳の今もトップレベルを維持しているが、それをできる限り長く維持することがウォリアーズの至上命題。彼の負担を減らす意味では、プレータイムをシェアするのではなく役割をシェアすべきで、クリス・ポールであればプレーメークを任せられる。

ウォリアーズにとって、『王朝』を作り上げた選手から次世代への段階的な移行というプロジェクトは、プールの放出で完全に頓挫したことになる。だがその代わり、カリーの残る全盛期で優勝を勝ち取りに行くという姿勢が明確になった。

ウィザーズは、できることならプールを再びトレードして指名権に変えたいだろうが、新たなエースに据える可能性もある。プールのエゴをむき出しにするプレースタイルはウォリアーズでは決して受け入れられなかったが、再建チームのエースとしてシュートを打ちまくり、30得点超えや40得点超えを連発し、ディフェンスで多少手を抜いてもとやかく言われない。ウォリアーズ時代とは違い優勝は望めなくなるが、チームバスケに縛られず自分の才能を解放できる環境は、今の彼に向いているのかもしれない。