ケビン・ラブ

「試合全体のことは忘れて、目の前のポゼッションにすべてを懸ける」

NBAファイナルが1勝3敗となったケースは過去に36回あり、そこから逆転で優勝した例は一つだけある。2016年のキャバリアーズだ。当時、レブロン・ジェームズを擁するキャブズは、1勝3敗でオラクル・アリーナに乗り込み、そこから3勝を挙げた。

「ああ、僕はそこにいた。プレーオフでは何が起きるか分からない。僕はそれを経験している」

そう語るのはケビン・ラブだ。「それを起こすために必要なのは、試合全体のことは忘れて、目の前のポゼッションにすべてを懸けること。一つのポゼッション、一つのクォーター、一つのハーフ……どんな手段を使ってでも、目の前の一つを取りに行くんだ」

あれから7年。キャブズに初優勝をもたらした時のラブは、NBAキャリア8年目の26歳で、これから選手としての全盛期を迎えようとしていた。34歳になった今の彼は、今シーズン途中にトレードでヒートに加わり、チームのバランスを支えるベテランらしい仕事をこなしている。プレーオフでも先発したりベンチスタートに回ったり、エリック・スポールストラの柔軟な起用法に応えつつ、常にチームに必要な何かを補う役回りに徹している。

第4戦はヒートのどの選手も調子が上がらない状況で、普段は支える側のラブがチームを引っ張るパフォーマンスを見せた。ニコラ・ヨキッチとジャマール・マレーを相手に激しく粘り強く守り、警戒されていない3ポイントシュート成功3本を含む11得点を記録。それはまさに「目の前の一つを取りに行く」という言葉を体現するパフォーマンスだった。

「ナゲッツは強い」とラブは相手の実力を認め、そこから再スタートしようとしている。

「ヨキッチとマレーだけじゃない。(ブルース)ブラウンもゴードンもゲームにインパクトを残した。ヨキッチのファウルトラブルは僕らにすごく有利だったけど、その機会を生かせなかった。ナゲッツには試合に影響を与えられる選手が多い。(ジェフ)グリーンもビッグショットを決めていた。僕らも切り替えて、ここから押し返さなきゃいけない」