バム・アデバヨ&ニコラ・ヨキッチ

空いているスペースを察知し、アデバヨの視線と動きからパスコースを予測

NBAファイナル第4戦はナゲッツが制し、初優勝に王手をかけました。ナゲッツが優勝すればファイナルMVPは二コラ・ヨキッチが受賞するでしょう。現代バスケに必要なスキルのすべてを持ち合わせ、すべてのプレーを高精度でこなすヨキッチは、プレーオフを通してリーグ最高の選手であることを証明してきました。

しかし、この第4戦はヨキッチにしてはミスの多い試合でした。

第3戦までペイント内の得点はナゲッツが17点近く上回っている中で、ヒートのディフェンスは止められないと感じたのか、第4戦はジャマール・マレーへのプレッシャーを強め、時にはハーフライン近くまでダブルチームで追い掛けるようになりました。マレーとヨキッチのピック&ロールに対し、ヒートのディフェンダーはハンドラーのマレーに寄るため、フリーになったヨキッチが3ポイントシュートを7本中3本を決めています。

そこまでは良かったのですが、ヨキッチはショートレンジのシュートを次々に外し、激しいプレッシャーを掛けられていたわけでもないのに12本中5本成功と確率を落としました。さらにヒートがボックスアウトを徹底し、セカンドチャンスを与えない修正も効いて、ナゲッツはシュートチャンスは作っているのに得点がなかなか伸びませんでした。

さらにヨキッチは不運なファウルコールに悩まされます。第4クォーター序盤にバム・アデバヨとのポジション争いで腕を使うオフェンスファウルを取られ、これで個人5つ目となってベンチに下がりました。アーロン・ゴードンやブルース・ブラウンの活躍もあって勝ち切ったナゲッツでしたが、ヨキッチにしてはオフェンスでの貢献度が低い試合となったのです。

一方でヨキッチの弱点とされているディフェンス面では、ヒートの狙いを潰していく活躍が目立ちました。スピード不足の上、リムプロテクト力も高いとは言えないヨキッチですが、ポジショニングが良く、相手のプレーを読むインテリジェンスの高さで弱点を補っています。第4戦は3つのブロックを記録していますが、豪快に叩き落すようなブロックではなく、相手がレイアップに行こうとしてボールをキャッチした瞬間にボールに触って奪い取るような形でした。プレーを読み切って手を出す上手さはヨキッチの持ち味です。

また、シューターの多いヒートはオフボールからの3ポイントシュートを打つことでスペースを広げ、空いたインサイドを利用してカットプレーを決める形や、ジミー・バトラーがフィジカルを生かしたポストアップを狙ってきましたが、起点となるアデバヨのパスをヨキッチが足も使いながら何度も止めました。ハイポスト近辺にいるアデバヨをマークしているヨキッチからすると、自分の背中側で動いているヒートの選手の動きは見えないはずですが、空いているスペースを察知し、アデバヨの視線と動きからパスコースを予測し、見事にヒートの狙いを潰しました。

NBAファイナルでのヒートは4試合中3試合で得点を100以下に抑え込まれています。ヒートのディフェンスがナゲッツの多彩なオフェンスをどう抑えるかがカギになると予想されましたが、ここまではナゲッツがディフェンスで優位を作り出している印象です。

ヒートはベンチメンバーまでフル活用した多彩なオフェンスパターンを武器とし、身体能力をベースにしたハードなディフェンスを打ち破って勝ち上がってきました。しかし、プレーパターンを読むヨキッチのインテリジェンスは、それよりもはるかに厄介なようです。