オフボールから得点する動きは「ゴードンから学んでいる」
NBAファイナルの第3戦、クリスチャン・ブラウンはベンチから19分の出場でフィールドゴール8本中7本、15得点を挙げた。絶妙なタイミングでゴール下のスペースに飛び込み、アシストパスを引き出してイージーなレイアップ、もしくはダンクで決めるのが彼のオフェンスパターン。ジャマール・マレーとニコラ・ヨキッチのピック&ロールに意識を向けるヒート守備陣は、ルーキーの彼をノーマークにせざるを得ない。そして彼は、自分のタイミングで飛び込めばマレーかヨキッチから正確なパスが出てくると信じて疑わない。
活躍は得点だけではなく、ディフェンスでもリバウンドでも示された。ベンチから出て、短い時間でも100%ハッスルするのが自分の仕事だと理解している。ポジションのミスもなくチームディフェンスの一角になるスマートさもあるが、ハイライトはジミー・バトラーを止めた2回のディフェンスだ。バトラーのパスを読んで手で引っ掛け、そのまま自らのダンクに繋ぐ。そしてアタックするバトラーに押し負けずにフィジカルで弾き返すシーンもあった。
ルーキーの彼はシーズンが進むにつれてプレータイムを伸ばした。ナゲッツは若いチームだが、マレーとヨキッチを中心に長く一緒にプレーするコアがあり、若手がそれに合わせるのは難しいために、サポートキャストでプレータイムを得られるのはベテランが多い。若手の大半がベンチを温めるのをよそに、クリスチャンはチームの信頼を勝ち取っている。
「彼はずっとあんな感じだよ」と指揮官マイケル・マローンは言う。「高校で州選手権を3連覇し、大学ではNCAAトーナメントを制した。自信があるのは当然だよ。だから我々は彼をドラフトで指名したし、期待以上のものを彼は見せている。シーズンを通して、プレーオフの18試合でもローテーションに入っていることが彼の自信になっている。高校と大学でチャンピオンになり、NBAではルーキーながらファイナルにいる。ルーキーだがフィジカルが強くアグレッシブで、迷いなくプレーしている。彼のプレーは大好きだ。若い選手がぐんぐん成長する姿を見るのは本当に楽しいよ」
マレーもヨキッチも、クリスチャンへ称賛の言葉を惜しまない。ヨキッチが「エネルギーと集中力とマインドセットで試合に勝つ選手。ミスをしたとしても、アグレッシブにいった結果のミスだから全然構わない」と言えば、「ディフェンスがしっかりしていて、ディフェンスで激しく戦う中でオフェンスのチャンスが生まれることを理解している。ルーキーだけど、僕らは彼を5年目ぐらいの経験がある選手として扱っているよ」とマレーは語る。
そのクリスチャンは、「みんなが僕を信頼してくれるおかげだ。みんな僕がプレーしやすいようにサポートして、適切なポジションに導いてくれる」と語る。
「だから僕の仕事は簡単なんだ。僕はただ一生懸命に、自分の仕事をやり遂げればいい。みんな僕にオフェンスはあまり期待していないから、ディフェンスで頑張ってリバウンドを取って、みんなが得点するためにポゼッションを増やそうとしている」
この日の試合後、クリスチャンはアーロン・ゴードンとともに会見に臨んだ。そこで彼は得点面での働きはゴードンからオフボールの動きを学んでいるからだと語る。「ニコラやジャマールと一緒にプレーすると、僕のシュートは全部レイアップになる。彼からパスを引き出すために僕がやっている動きは、アーロンのプレーに似ているんだ。アーロンは僕と違って、レイアップよりロブをそのままダンクするけど、その動きは僕にも参考になる。彼から多くを学んでいるよ」
ナゲッツが勝った時は、試合後のロッカールームで指揮官マローンが活躍した選手にナゲッツのロゴ入りのチェーンを手渡してチームで称えるのが恒例となっている。この日は30得点オーバーのトリプル・ダブルを記録したヨキッチとマレーに続いて、クリスチャンもチェーンを手渡された。
勝者のメンタリティを持つクリスチャン・ブラウンが、ここに来てヒートのハッスルに対抗する重要な戦力として脚光を浴びている。ゴードンは言う。「ここにいるのは珍しいルーキーだ。初日からずっとトップにいて、ここまでずっとそうなんだ」