タイラー・ヒーロー

「回復に向けて努力する姿は我々に勇気を与えてくれる」

タイラー・ヒーローはプレーオフのファーストラウンド初戦、第2クォーター終盤のディフェンスでルーズボールにダイブした際に、右手をフロアに打ちつけた。彼は痛みを抱えながらしばらくプレーを続け、3ポイントシュートも決めているが、右手首を骨折していた。彼はプレーオフの最初の試合、前半の19分間に出場しただけで戦線離脱となった。

ヒートは第8シードで、東カンファレンス首位のバックスと対戦していた。先発ポイントガードのヒーローの離脱は大きな戦力ダウンで、もはやヒートに勝ち目はないと見られたが、彼はすぐに手術をすることを決め、「NBAファイナルには復帰できるかもしれない。そのために一日一日を大切に過ごしていく」と宣言している。

ヒーローの代役として先発ポイントガードとなったゲイブ・ビンセントがブレイクし、ベテランのカイル・ラウリーもプレーオフになって調子を上げ、3ポイントシュートの部分はダンカン・ロビンソンが見事な復活を果たして、ヒートはバックス相手のアップセットを皮切りに、ニックスとセルティックスを打ち破ってNBAファイナルの舞台へと進んだ。

カンファレンスファイナルの時点でヒーローはボールを使った練習を再開させているが、NBAファイナル前日の会見でヒートを率いるエリック・スポールストラはこう語る。「急ぎたくない。彼はまだ復帰のプロセスを始めたばかりで、次の重要な段階をクリアしない限りは私は何も言えない。コンタクトありの練習など、まだやらなければいけないことは多い」

スポールストラは「回復に向けて努力する姿は我々に勇気を与えてくれる」とヒーローの努力を称えたが、「我々は責任を持って決断したい。まだ彼は準備ができていないんだ」と続けた。

レギュラーシーズンでのヒーローは67試合に出場し、34.9分のプレータイムで20.1得点、5.4リバウンド、4.2アシストを記録。もともと持っていた得点力に加えて、最近ではハンドラーとしての向上が目覚ましい。

プレーオフでのヒート躍進の背景には、オンボールでプレーする彼が離脱したことで、全員でボールをシェアしてプレースピードが上がり、ディフェンスからのブレイク、素早い仕掛けからの3ポイントシュートというスタイルが明確となる『ケガの功名』があった。それでも、彼のプレーが不要ということにはならない。今ここでヒーローが復帰して、彼らしいプレーメークをすれば、ヒートのオフェンスには明確な変化が生まれる。それはナゲッツにとっては厄介な、ヒートの新たな武器となる。

NBAファイナル第1戦には間に合わないとしても、最大7試合を戦うシリーズのどこかで、彼が大きな仕事をやってのけるタイミングが来るかもしれない。その時のために、ヒーローの復帰に向けた準備は進んでいく。