ジミー・バトラー

「特別な何かをやらなきゃ勝てないだろうが、僕らは特別なチームだ」

NBAのプレーオフが7試合で戦われるようになって、0勝3敗となったチームは150あるが、そこから4連勝でシリーズを突破した例はない。0勝3敗から3連勝した例は過去3回あるが、いずれも『GAME7』で敗れている。

今、人々が期待するのはNBA史上初の快挙だ。0勝3敗から3連勝してホームに戻って『GAME7』を戦うセルティックスが有利、というのが大方の見方。セルティックスがボストンで戦う『GAME7』は通算22勝5敗。ホームアドバンテージがかなり大きいのは間違いない。

しかし、ヒートはまだノックアウトを食らったわけではない。3連敗でフラフラかもしれないがファイティングポーズを崩さず、ヘッドコーチのエリック・スポールストラは「あれだけ死力を尽くしたのに最後の最後でひっくり返されて、率直に言えばショックな負け方だよ。だが、このチームの競争心は決して否定されない。こんな試合の後でも我々は必ず立ち上がる」と語る。

ヒートはレギュラーシーズン8位。プレーイン・トーナメントの初戦でホークスに敗れて崖っぷちに立たされたが、2戦目でブルズを一蹴してプレーオフの最後の切符をつかみ取り、バックス、ニックスを相手にアップセットを重ねてきた。不利な状況には慣れている。むしろこのシリーズで3勝0敗になり、その強さを称えられるようになって調子が狂ったのかもしれない。

周囲が「ヒートはもう終わりだ」と思った時こそ、このチームは結束して恐るべき力を生み出す。ゲイブ・ビンセントは「このチームはずっとこの状況にいた。こうなることは決まっていたのかもしれない」と言う。ダンカン・ロビンソンは第6戦が終わった直後のロッカールームの様子を「みんな声を出していた。シリーズが終わったように感じてはいなくて、自分たちにはまだチャンスがある、という感じだった」と説明する。

この3連敗ではジミー・バトラーとバム・アデバヨのオフェンスでの不振が目立つ。バトラーはプレーを読まれて苦戦しており、アデバヨも得点が伸びない。だが2人に共通しているのは、戦い続けるという意思だ。

アデバヨは「言い訳はしない。僕は今打っているシュートを打ち続けるだけだ。自分としては良いシュートが打てている感覚はあって、それで決まらないのはリムに蓋がされているような感じだけど、乗り越えてみせる」と語る。

バトラーは「問題なのは、ただシュートを外したことだ」と言う。「僕は打ち続けなければいけない。アグレッシブにプレーして、みんなを引っ張り続ける。僕がそうすれば、みんなも付いてきてくれる。ロッカールームでも言ったんだけど、僕が良いプレーをしていればこんなに苦戦せずに済んだ。だからこそ僕はもっと良いプレーをする。笑顔でプレーを楽しむつもりだよ。僕がそうやってプレーしている時は、チーム全体も良いと思うんだ」

バトラーはこう続ける。「合格するまで同じテストを受けることになる。昨シーズンも同じような状況だった。厳しい状況だけど、アウェーで勝てると信じている。特別な何かをやらなきゃ勝てないだろうが、僕らは特別なチームだ」

そしてスポールストラも、一つのことには絶対的な自信を持っている。「私が指導してきたどのチームよりも、勝ちたいという気持ちが強いのが今のチームだ。『GAME7』のプレッシャーはすごいだろうが、このチームはそれに左右されないよ」