桶谷大

「その時々で、試合の最後にいろいろな組み合わせを作れるのがキングスの強さ」

琉球ゴールデンキングスは横浜ビー・コルセアーズとのチャンピオンシップセミファイナルで初戦を86-70、第2戦を88-84で制し、連勝でファイナル進出を決めた。

この2試合、琉球は自分たちの強みであるゴール下の肉弾戦で主導権を握ったことが大きな勝因となったが、ベンチメンバーの奮闘も勝利に欠かせなかった。初戦では今村佳太、岸本隆一の中心選手が揃ってファウルトラブルに陥る中、松脇圭志が3ポイントシュートを5本成功させて15得点をマークした。第2戦ではコー・フリッピンが河村勇輝に対して粘り強いディフェンスを見せて失点を最小限に抑え、小野寺祥太は3ポイントシュートを4本中3本成功させ、リードを許す中でも食らいつき終盤の逆転へと繋げる原動力となった。

琉球の桶谷大ヘッドコーチは、選手層の厚さについてこのように自信を見せる。「自分たちの流れが良い時に出ているメンバーが試合毎に違います。その時々で、試合の最後にいろいろな組み合わせを作れるのがキングスの強さで、誰が出ても特徴を持っていることが実感できています」

琉球にとってファイナルは昨シーズンに続いて2年連続での出場となる。昨シーズンは過去3回連続で敗退していたセミファイナルの壁をようやく打ち破っての初のファイナル。チームの歴史に大きな一歩を刻んだこともあり、ファイナルに進出したことによる達成感も少なからずあった。しかし、今年のチームにとってファイナル進出はあくまでも通過点に過ぎない。宇都宮ブレックスに連敗した昨年の雪辱を果たすためにスタートラインに立ったという意識で、桶谷ヘッドコーチも「去年と心境は違います」と強調する。

「去年は必死の思いでファイナルに辿り着いて、準備の仕方とかも含めてファイナルの経験不足だったとすごく感じました。今シーズンはファイナルで勝って優勝することが目標で、だからこそ日頃の行動からみんなが求めるスタンダードが上がりました。今年こそ勝ちたいですし、勝てる準備をしてきた自信はあります。驕らず、常にチャレンジャーの気持ちを持って臨みたいです」

琉球ゴールデンキングス

「去年のファイナルで悔しい思いをした選手たちの余裕が違います」

この勝てる準備の象徴と言えるのが、徹底したコンディション管理だ。今シーズンのBリーグでは過密日程の影響もあって故障者に苦しむチームが多く、チャンピオンシップをベストな状態で迎えたチームは少なかった。だが、琉球はアウェーの移動が全て飛行機という離島のハンデに加え、シーズン途中には東アジアスーパーリーグも入るリーグ随一の過酷な環境だったが、長期の離脱者なく乗り切った。

それができたのも目先の勝利を追い求めつつ、いかに万全の状態でチャンピオンシップに臨めるか、しっかりと先を見据えてチーム作りを行ってきたからからこそ。この結果、レギュラーシーズンで同じメンバーで多くの試合を重ねることでケミストリーを高めることができ、チームの底上げへと繋がった。

桶谷ヘッドコーチは、このようにチームの取り組みを明かす。「まずはトレーナー、ストレングスコーチも含めたメディカルチームの努力のおかげです。そしてコーチ陣、スタッフみんなが一つになってコミュニケーションを取り、選手たちの疲れが今どれくらいあるのかを含めてプレータイムの制限もずっとシーズンを通してやってきました。それがケガに繋がらなかったところもあると思います」

「さらに1人、外部からケガの予防をするためのトレーナーが月2回くらい来てくれています。慢性的なケガを予防するためのトレーニングをしてくれていて、ケガに対して敏感に対処していたことで、大きな負傷もなくシーズンを乗り越えられたと思います」

また、指揮官は、「去年のファイナルで悔しい思いをした選手たちの余裕が違います」と、大舞台でより重要となるメンタル面の成長にも手応えを得ている。「厳しい時間帯でも慌てていない。だからオフェンス、ディフェンスともに遂行力が全然違っていたと思います。チームとして崩れない。場慣れしたことで去年とは全然違う強さが身についています」

そして最後に「お客さんを巻き込んで横浜アリーナを沖縄アリーナの雰囲気にしていきたいです」と、琉球の強さの源泉であるファンの圧倒的な声援を導くプレーをしたいと語った。

琉球ファンの大きな特徴は、会場のMCによる呼びかけがなくても自発的に声援が巻き起こること。さらにハッスルプレーや身体を張ったディフェンスなど、琉球のチームカルチャーである泥臭く、献身的なプレーが出た時にこそ声援のボルテージは上がる。

過去の対戦を見ても、琉球が勝つには千葉ジェッツの強力なオフェンスを防ぎ、80失点以下の展開に持ち込めるかが大きな鍵となる。琉球が粘りのディフェンスを継続し、千葉Jの得点を抑える。それに呼応するように琉球ファンの「ディフェンス」コールが会場を包み、横浜アリーナに指揮官が求めるような熱狂が生まれた時、琉球には必ず勝機が訪れる。