「一番良いタイミングで自分たちのバスケができるようになった」
セルティックスとのカンファレンスファイナル第3戦、ゲイブ・ビンセントはゲームハイにしてキャリアハイとなる29得点を記録し、ヒートの128-102の完勝に大きく貢献した。
ビンセントはレギュラーシーズンでは68試合に出場。うち34試合で先発を任され、平均25.9分のプレーで9.4得点、2.5アシストを記録。それがプレーオフになると14試合すべてで先発して31分の出場で12.9得点、4.1アシストとスタッツを伸ばしている。
タイラー・ヒーローとバックコートでコンビを組み、激しいディフェンスでストップを掛け、粘り強いディナイでディフレクションを生み出すのがビンセントの役回りだった。得点力のあるヒーローがプレーオフ初戦で手首を骨折して戦線離脱したのは痛手だったが、オンボールで持ち味を発揮するヒーローが離脱したことでチーム全体のボールムーブが良くなり、彼を筆頭に『脇役たち』が目立つようになった。ビンセントにマックス・ストゥルース、ケイレブ・マーティン、そしてダンカン・ロビンソンも鮮やかな復活を果たしている。
ジミー・バトラーとバム・アデバヨが中心のチームではあるが、『脇役たち』の働きなくしてこの快進撃はない。選手とボールが連動してよく動き、ワイドオープンのチャンスができれば誰であっても迷わず打っていくスタイルは、このプレーオフを通じて一貫したもの。この日はビンセントに『当たり』が来て、フィールドゴール14本中11本成功、3ポイントシュート6本成功で得点は29まで積み重なった。
「サプライズと言われるだろうけど、結局のところ僕らが良いプレーをしたということだ。良いディフェンスをして、ターンオーバーを誘い、シュートを決めた。付け加えるならホームでの試合で、ファンに勢いをもらったと思う」とビンセントは言う。
ビンセントはNBAキャリア4年目の26歳。NBAプレーヤーとしては遅咲きだ。カリフォルニア大サンタバーバラ校で4年間プレーし、2018年のNBAドラフトでは指名を受けられず、キングス傘下のGリーグチームでプレーした。2シーズン目の途中にヒートと2ウェイ契約を結んでNBAデビュー。そこから4シーズン、少しずつ成長して信頼を積み重ね、ヒートの主力としてプレーオフの舞台に立っている。
この舞台にたどり着くまでに重ねた苦労を考えれば、どんな小さな仕事もおろそかにはしない。ヒートを率いるエリック・スポールストラは先日、プレーオフで突如として強くなった秘訣を問われて「レギュラーシーズンで何度も失敗して多くのことを試し、全員で乗り越えてきたから今がある」と答えた。
ビンセントは同じ問いに「時に苦しく、時にやり甲斐のある過程だったけど、今はやり甲斐だけを感じているよ。僕らはたくさんの努力をしてきた。長いシーズンだったけど、一番良いタイミングで自分たちのバスケができるようになった」と答えているが、それはNBAキャリアを通じて彼がやってきたことだ。
「僕にとって大事なのは、今この瞬間に自分がどこに立っているか。前半の出来が悪かったり、ひどいターンオーバーがあったとしても、次のプレーに向けて正しいメンタリティを持つことだ。次のポゼッションでどう勝つか、チームが勝つためにどう貢献できるかに集中する。それをずっとやり続けることなんだ」
ヒートは敵地で2勝を挙げ、マイアミに戻って3勝目を挙げた。プレーオフでの3勝0敗が意味するものは『勝利』に他ならないが、ヒートは第4戦でも油断しないだろう。ビンセントはこう語った。「僕らは3つ勝ちたいんじゃない。4つ勝ちたいんだ」