序盤で大きく突き放し、安定の試合運びで5シーズン連続のセミファイナル進出
琉球ゴールデンキングスが5月13日、チャンピオンシップのクォーターファイナルで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。アレン・ダーラムが30得点を挙げるなど、インサイドを軸に効果的に得点を積み重ねて92-81で勝利した。第1戦に続いて連勝の琉球は、コロナ禍によるシーズン打ち切りを挟み、5シーズン連続となるセミファイナル進出を決めた。
名古屋Dは前日の試合途中に負傷退場した張本天傑に加え、スコット・エサトンも故障で欠場。すでに離脱中のレイ・パークスジュニア、菊池真人も含め深刻なサイズ不足に陥ったこともあり、出だしから激しく当たっていくなどディフェンスで仕掛けていく。だが、琉球は冷静に対処すると、桶谷大ヘッドコーチが「昨日の反省から第1クォーターで3ポイントシュートを簡単に打たせないことを重視しました。打たれはしましたが1本も決められなかったところで流れを作れました」と称えたように、このクォーターで名古屋Dの長距離砲を7本すべて失敗に抑えるディフェンスで勢いを作り出す。
そしてオフェンスでは、第1戦で24得点の今村佳太が引き続き3ポイントシュートを確率良く決めると、ジャック・クーリーがオフェンスリバウンドからねじこむ得意のプレーで牽引しリードを奪う。さらに終盤には牧隼利、コー・フリッピンも決めるなど、このクォーターで3ポイントシュート7本中6本成功と相手のお株を奪う長距離砲の爆発となり、30-16とビッグクォーターを作った。
第2クォーターに入っても琉球の流れは続きリードを20点にまで広げる。だが、中盤以降になるとオフェンスで緩慢なミスや、強引な突破に頼った雑なプレーが目立つようになりリズムを崩してしまう。その結果、残り3分には11点差にまで追い上げられてしまったが、ここで今村が貫禄の3ポイントシュート連発で悪い流れを断ち切り、52-33でハーフタイムを迎える。
後半になっても琉球は、手堅いゲーム運びで常に15点以上のリードをキープしていく。終盤、須田侑太郎の連続3ポイントシュート成功による反撃に遭うが、それでも危なげない試合運びで逃げ切った。
このシリーズ、琉球は初戦(91-85)と合わせ、2試合続けて90得点以上のハイスコアをマークし、高確率でシュートを決めたオフェンス力が目立った。しかし、特にこの試合に限っては、第3クォーターまでクォーターごとの失点を17以下に抑えた、堅いディフェンスがもたらした勝利だったと言える。
「試合を通して安定したディフェンスをできたことが良かったと思います」
この堅守をもたらした1人が岸本隆一だ。鋭い寄せで、相手の進路を塞ぎ、前半だけで3つのオフェンスファウルを誘発するなど、見事なディフェンスを披露した。
「試合を通して安定したディフェンスをできたことが良かったと思います。選手全員が試合の中でアジャストし、ディフェンスから入って決めるべきシュートを決める。チーム全員が仕事をしたゲームになりました」
このように試合を振り返る岸本は、チャンピオンシップではいつも以上にディフェンスが重要になってくると強調する。「キングスのスタイルもありますが、CSは削り合いですし、いかにディフェンスで自分たちのプラン通りにやれるか。そこをしっかりオフェンスに繋げて勢いを生み出していけるのか。それがCSを戦っていく上で大切な部分で、得点よりもディフェンスに神経を使っています」
この2試合、琉球の日本人選手の中では、2日間合計で3ポイントシュートを20本中12本成功させ41得点を挙げた今村、そして安定感抜群の岸本の存在が際立っていた。桶谷ヘッドコーチも「昨日は今村、岸本の(主力としたプレーした)去年のファイナルの経験で、勝てました」と言い、彼らに絶大な信頼を寄せる。
ファイナルの経験がどう生きているのか岸本に尋ねると「去年、ファイナルで負けた悔しさはずっと残っています。悔しいから奮起してというより、ずっと何をすればよかったのかと思いながら過ごしています」と、雪辱への強い思いを明かし、頂上決戦の経験がもたらしたものを挙げた。「肌感覚ですけど、ファイナルはセミファイナル、クォーターファイナルとは違う次元で一つひとつのプレーに責任を感じるような舞台です。そういった意味でこの段階では、他のチームと比べて落ち着いてプレーできると思います」
そして岸本は、このシリーズを「今あるすべての力で良いディフェンスができた感覚はあります。来週以降の自信になると思います」と、次に良い形で繋げる勝ち方ができたと締めくくった。
2年連続のファイナルへ向け、まだ相手は決まっていないがセミファイナルも舞台は引き続き沖縄アリーナとなる。「一番の武器はホームコートアドバンテージです。試合を通してバスケットボール以上の力を生み出せるように戦っていけたらと思います」。こう岸本が強調するように、8,000人を超える満員の観客による声援は琉球にとって何よりも大きな武器となる。文字通りファンと一緒に戦うことで、琉球は2年連続となるファイナルへの切符をつかみに行く。