ジェイレン・ブランソン

敵将も脱帽「どうして彼がオールスターにもオールNBAにも入っていないのか」

ジェイレン・ブランソンにとっては自分の名を世に知らしめるポストシーズンとなった。11試合で27.8得点、4.9リバウンド、5.6アシストを記録。スタッツで最も驚くべきは平均プレータイムの40分だ。トム・シボドーは決まった主力にプレータイムを偏らせる傾向が強いが、ヒートとの第5戦では48分フル出場、最後の第6戦でも45分プレーした。ほんの数分、数ポゼッションであっても、彼がコートにいないとニックスが攻守に機能不全に陥るのは明らかだった。

シボドーは「NBAで最高の選手の一人だ。試合のたびにそのことを示した」と語り、対戦相手のヒートを率いたエリック・スポールストラも「どうして彼がオールスターにもオールNBAにも入っていないのか、私には理解できない。対戦相手として尊敬する」と賛辞を送っている。

それと同時に、スポールストラが彼を認めたように、ブランソンもまたヒートに最大限の称賛を送った。「第8シードのチームの戦いぶりじゃなかった。ヒートは大いに評価しなきゃいけない」

それでも、彼が欲しかったのは称賛の言葉ではなく、シリーズを突破するのに必要な勝利だった。第4クォーター残り16秒、2点ビハインドの場面。最後の攻めの機会を託された彼はゴール下まで攻め込むもシュートを打てず、パスの出し手を探す瞬間にボールを奪われた。試合後、彼はそのことばかりを考えていた。「最低でもシュートを打たなければいけない場面だった。あのターンオーバーは受け入れられない」

「今シーズンは素晴らしいことがたくさんあった。これからもプレーを続けて、多くのことを成し遂げるための素晴らしい経験だったけど、勝てなかったんだ。僕たちは負けてしまった」

敗れはしたが、第6戦まで続いたシリーズはどちらに転ぶか分からない激闘で、彼としてもチームとしても現時点で持てる力を発揮した末の敗退だった。指揮官シボドーは教え子たちの健闘を称え、「シーズンの最後には常に失望があるものだ。悔しさは競争心のある者だけが持てるもの。これをモチベーションにしよう」と語る。「ここで学んだことを次に生かす。しばらくバスケから離れ、気持ちを落ち着かせてからね。このチームは1年を通して日々成長した。そのことを誇りに思う」

その言葉はブランソンにも届いていた。マーベリックスからニックスに加入し、ルカ・ドンチッチのサポート役だった彼はチームを背負うリーダーになった。そうしてプレーオフまでチームを引っ張った経験は、NBAキャリア5年目を終えたばかりの26歳には本当に貴重なものだ。

「そうだね。来シーズンはまたきっと楽しくなる。やらなきゃいけないことはまだたくさんあるし、この経験を生かして前に進まなきゃいけない。僕たちは素晴らしいシーズンを過ごした。このシリーズでも、物事が上手くいっていない時でも自信を持ってバスケに取り組むことができた」

2シーズン前のプレーオフは、その舞台に立つのがやっとだったニックスは、今回は確かな収穫を手に入れて舞台を降りる。経験だけでなく自信も得たことは、きっと次に繋がるはずだ。