数字上ディフェンスリバウンドを苦手とする名古屋Dがどう対応するか!?
この記事を開いてくれたすべての皆様、数字の沼へようこそ。自称『日本一スタッツをとる素人』である私しんたろうが、公式サイトのボックススコア(ベーシックスタッツ)から一歩踏み込んだ『アドバンスドスタッツ』を紹介、解説していきたいと思う。
ついに始まるチャンピオンシップ。これまで紹介したアドバンスドスタッツをもとに、2021-22シーズンファイナリストの琉球ゴールデンキングスvs昨シーズンは外国籍選手のケガで悔しい敗退を喫した名古屋ダイヤモンドドルフィンズの一戦を分析してみよう。
今回利用するスタッツはこちら
※各スタッツの詳細・計算式は紹介記事参照
2FG%=2ポイントシュート決定率
3FG%=3ポイントシュート決定率
FT%=フリースロー決定率
eFG%=実質シュート決定率
TS%=フリースローを含むすべてのシュートの得点効率
HOMEeFG%=ホームゲームにおける実質シュート決定率
HOME2FG%=ホームゲームにおける2ポイントシュート決定率
HOME3FG%=ホームゲームにおける3ポイントシュート決定率
AWAYeFG%=アウェイゲームにおける実質シュート決定率
AWAY2FG%=アウェイゲームにおける2ポイントシュート決定率
AWAY3FG%=アウェイゲームにおける3ポイントシュート決定率
※上記6項目はこちらを参照 2PA%=2ポイントシュートを打った割合
3PA%=3ポイントシュートを打った割合
FTD%=フリースローを得た攻撃の割合
※上記3項目はこちらを参照 FBP%=速攻による得点割合
PitP%=ペイントエリア内得点割合
SCP%=セカンドチャンス得点割合
OR%=オフェンスリバウンド獲得率 DR%=ディフェンスリバウンド獲得率
TOV%=ターンオーバーになった攻撃の割合
AST%=アシストから得点になった割合
AST/TOV=アシストとターンオーバーの比率
Possession=攻撃回数
ORtg=100回攻撃した場合平均で何点取れるのかを計測したもの
DRtg=100回攻撃された場合平均で何失点するのかを計測したもの
早速36節までのスタッツを比較してみよう。
数字が上回っているスタッツには☆を付けている。
項目 | 琉球 | 名古屋D | |||
2FG% | 52.06% | 54.28% | ☆ | ||
3FG% | 33.84% | 35.52% | ☆ | ||
FT% | 73.61% | 73.94% | ☆ | ||
eFG% | 51.55% | 53.93% | ☆ | ||
TS% | 55.07% | 56.72% | ☆ | ||
HOMEeFG% | 52.97% | 56.07% | ☆ | ||
HOME2FG% | 54.20% | 55.63% | ☆ | ||
HOME3FG% | 34.12% | 38.23% | ☆ | ||
AWAYeFG | 50.04% | 52.22% | ☆ | ||
AWAY2FG% | 49.77% | 53.37% | ☆ | ||
AWAY3FG% | ☆ | 33.33% | 33.33% | ||
2ptA% | 53.76% | 56.40% | ☆ | ||
3ptA% | ☆ | 35.37% | 34.28% | ||
FTD% | ☆ | 10.87% | 9.32% | ||
FBP% | 10.87% | 19.04% | ☆ | ||
PitP% | 45.97% | 47.63% | ☆ | ||
SCP% | ☆ | 19.39% | 16.45% | ||
ORB% | ☆ | 37.45% | 34.72% | ||
DRB% | 76.35% | 67.73% | ☆ | ||
TOV% | ☆ | 17.77% | 16.97% | ||
AST% | 55.61% | 57.52% | ☆ | ||
AST/ TOV | 1.77 | 1.99 | ☆ | ||
POSSESSION | 71.34 | 73.89 | ☆ | ||
ORtg | 113.91 | 115.63 | ☆ | ||
DRtg | ☆ | 103.14 | 103.98 |
100回攻撃した場合平均で何点取れるのかを計測した『ORtg』では琉球が113.9、名古屋Dが115.6。100回攻撃された場合平均で何失点するのかを計測した『DRtg』においても、103.1の琉球に対し、名古屋Dは103.9と、攻守ともにスタッツ上ではほとんど差が見られない。さらに3ポイントシュートを打った割合『3ptA%』、2ポイントシュートを打った割合『2ptA%』においても大きな差がなく、シュートの傾向も非常に似ている。
そんな互角の両チームに戦略差はあるのかを分析してみる。まずは琉球から見てみよう。琉球の特徴といえば、オフェンスリバウンド獲得率『OR%』、そこからのセカンドチャンス得点割合『SCP%』だ。『OR%』と『SCP%』はともにリーグ1位の数字で、フリースローを得た攻撃の割合『FTD%』もリーグ上位に位置している。これらの数字を見ると、(セカンドチャンスはゴール付近のシュートになることが多いため)2ポイントシュートが多いチームに感じるが、『3ptA%』を見てみるとリーグ平均とほぼ同等。つまり1stショットは3ポイントシュートが多いということが示唆される。
もう一つの特徴はホームゲームの強さだ。『AWAY2FG%』と『HOME2FG%』を比較すると、なんと4.5%もの違いがある。ここに記載はしていないが、ディフェンススタッツもホームで大きく向上する傾向にある。
続いて、名古屋Dの特徴は速攻の多さだ。速攻による得点割合『FBP%』はリーグ1位の19.0%と、総得点の約2割を速攻から獲得している。さらにリーグトップクラスの『AST%』(アシストから得点になった割合)を誇っており、ボールと人が良く動くスペーシングバスケットを展開している。素早いパス回しから3ポイントシュートというイメージがあるかもしれないが、意外にも現在の名古屋は2ポイントシュートが多いチームである。「現在は」としたのは、開幕から40試合の『2ptA%』は53.9%であるのに対して、直近20試合の『2ptA%』は61.28%と急増しており、これはアラン・ウイリアムズの加入による戦略の変化が影響していると予想される。リーグ前半は3ポイントチーム、後半は2ポイントチームとして白星を重ねた珍しいチームだ。
『HOME3FG%』が驚異的に高い傾向にあるため、アウェーゲームにおいてもそのポテンシャルを発揮できるかに注目。惜しむらくは、(ゾーンディフェンスを多用するためか)リーグ下位に沈んでいるディフェンスリバウンド獲得率『DR%』で、このマッチアップにおいては分水嶺になるかもしれない。
あらためて、琉球vs名古屋Dの見どころをおさらいしよう。
①オフェンスリバウンドを得意とする琉球に対し、数字上ディフェンスリバウンドを苦手とする名古屋Dがどう対応するか
②名古屋Dが自分たちのハイペースゲームに持ち込むことができるか
③ホームを得意とする琉球が数字通りの『2FG%』で決めきることができるか。また、名古屋がアウェーのプレッシャーを跳ね返し、ポテンシャル通りの『3FG%』を記録できるか。
注目選手
スコット・エサトン(名古屋D)
チームのディフェンスリバウンド総数に対して約20%(303本)を占めるエサトンの命題は2つ。1人ないし2人でジャック・クーリー(琉球)のオフェンスリバウンドを止め、ディフェンスリバウンドを獲得すること。そして、自身もしくはチームがディフェンスリバウンドを獲得した際には、相手ゴール下へダイブすること。基本的にセンタープレーヤーが走るチームはペースアップする傾向にあるため、速攻を走ることを苦にしないエサトンの獅子奮迅の活躍が期待される。