サンズの逆襲を浴びて連敗のナゲッツ、シリーズは2勝2敗に
ニコラ・ヨキッチにとってはストレスの溜まるゲームだった。キャリアハイの53得点を記録したにもかかわらずナゲッツは124-129でサンズに敗れ、理不尽なテクニカルファウルを受けて敵地の観客を敵に回すことにもなったからだ。
事件は前半残り2分半のところで起きた。ディアンドレ・エイトンのゴール下でのシュートをヨキッチがブロックし、外に出て行くボールを追ったジョシュ・オコーギーがエンドライン最前列の観客席に飛び込む。すぐにプレーを再開しようと近付いたヨキッチに対し、観客はボールを小脇に抱えて離そうとせず、周囲のファンも含めて揉み合いとなった。この時、ボールを抱えた観客を肘で押したことでヨキッチはテクニカルファウルを受けている。
その後、フェニックスのファンはナゲッツの絶対的なエースであるヨキッチを怒らせ、集中力を途切れさせようと、執拗なブーイングを浴びせた。結果としてヨキッチは素晴らしいパフォーマンスを続けたものの、ストレスを抱えながらのプレーを余儀なくされた。
試合後、この騒動によりリーグから出場停止処分が科される可能性があると聞かされ、ヨキッチはフラストレーションを爆発させた。「審判からは僕が肘で押したと言われたが、先に観客が僕に手を掛けていた。リーグは選手を守るものだと思うが、そうじゃないのか?」と彼は言う。
この観客はただのファンではなく、数カ月前にサンズの新オーナーになったマット・イシビアだった。彼はヨキッチに肘で押されると大袈裟に倒れ、ヨキッチのテクニカルファウルを引き出した。サンズのアリーナスタッフは、1人のファンを退席処分にしているが、それは騒動の中心にいたイシビアではなく、後ろから騒動に加わってヨキッチを押した人物だった。
「それが誰であろうと観客に変わりはない。ボールを持ってゲームに影響を与えることはできない。もしそれをやるなら、この場所から追い出されるべきだ」とヨキッチは言う。
ナゲッツのヘッドコーチ、マイケル・マローンは映像を確認していないと前置きした上で、「あれでニコラがテクニカルファウルを受けたのはクレイジーだ。彼はボールを取りに行っただけだ」と語り、その相手がサンズのオーナーだったことに対しては「そんなことはどうでもいい」と吐き捨てた。
NBAの規定では、プレーの継続以外の目的で意図的に観客席に立ち入った場合は即座に退場となる。審判はそれには当たらないとしたが「あそこで起きたことに対してテクニカルファウルが適切だと判断した」とコメントしている。
サンズの面々はこの件についてあまり触れなかったが、デビン・ブッカーは冗談めかして「彼はあそこで自分の仕事をして、1点を取ってくれた」と語った。
いまだ2勝2敗のイーブンではあるが、連敗している分だけナゲッツは旗色が悪い。これでリーグからヨキッチが出場停止を受けるようなことがあれば、ナゲッツはかなりの劣勢に立たされることになる。
ただ、デンバーに戻っての第5戦に向けてコントロールできることに集中すべきだろう。問題はブッカーとケビン・デュラントがそれぞれ36得点と2人のエースを止められないこと。さらに試合開始から猛烈に飛ばすが第4クォーターになるとブッカーの得点が止まるのがサンズの弱点で、この試合でもブッカーは最終クォーターで無得点に終わったが、伏兵のランドリー・シャメットがこのクォーターだけで3ポイントシュート4本成功を含む14得点とオフェンスを活性化させた。その意味でもサンズにとっては今後に弾みのつく1勝だった。
ナゲッツがここからどう反撃に出るのか。ヨキッチへの追加処分はないとの見方が濃厚ではあるが、その判定も待たれる。