先制パンチを食らうも、我慢を続けSR渋谷に逆転勝利
川崎ブレイブサンダースは5月6日、ホームでサンロッカーズ渋谷と対戦。出だしで大きく出遅れたが、要所で3ポイントシュートを沈めて流れを変えると、第2クォーター以降に守備のギアを上げたことで79-70と逆転勝ちを収めた。
第1クォーターの立ち上がり、川崎は佐藤賢次ヘッドコーチが「一番警戒していたリバウンドと速い展開の攻めを受けて、全部後手に回ってしまいました」と語ったように攻守で精彩を欠いた。その結果、渋谷にボールをテンポ良く回されてオープンショットを決められ2-12とつまずいた。また、オフェンスは打つべきタイミングで打てず、ニック・ファジーカスにタフショットを任せて外れるチグハグな展開が続き、9-26と大きなビハインドを背負った。
それでも第2️クォーターに入り、川崎は守備の強度を上げることでズレを作らせずSR渋谷に単発のシュートを打たせ続けた。この結果、このクォーターでSR渋谷のフィールドゴールを16本中4本成功に抑えると、リバウンドを取ってからトランジションに持ち込むことで流れを引き寄せた。そして、終盤には前田の連続3ポイントシュートが飛び出し、30-36と追い上げて前半を終える。
後半の出だし、川崎は強引な攻めからミスが続き、0-7のランを食らってしまったが、前田、長谷川技の連続3ポイントシュート成功で悪い流れを断ち切る。そして終盤にはエースの藤井祐眞が3ポイントシュート成功に、味方の長距離砲をもたらすアシスト、再び自ら3ポイントシュート成功と活躍を見せ、逆転して第3クォーターを終える。
第4クォーターに入ると「後半はアジャストしてポイントを絞って守ることをやり切れました。チームでつかんだ勝利だと思います」と佐藤ヘッドコーチが振り返るように、川崎は堅守からトランジションに持ち込むと、ファジーカス、ジョーダン・ヒースのインサイド陣が高確率でシュートを決めることでSR渋谷を突き放し、勝利を収めた。
川崎は第1クォーターこそ4本すべて失敗したが、第2クォーター以降は20本中11本成功と効果的に3ポイントシュートを決めたことが大きな勝因となった。特に5本中3本成功を含む11得点を挙げた前田悟の活躍は際立っていた。
佐藤ヘッドコーチが「第2クォーターに6点差まで縮められたことが大きかったと思います」と振り返った試合の大きなターニングポイントも前田の連続3ポイントシュート成功があってのもの。また、第3クォーター序盤のSR渋谷の連続得点を止めたのも、前田の長距離砲だった。
「スタートで出してもらっているので、出だしが悪かったのは責任があります」
スタッツ以上のインパクトを残した前田だが、何よりも先発の一員として出だしでつまずいたことを反省した。「出だしで向こうにファーストパンチを食らった中、なんとか我慢して最後に逆転できたのは良かったです。ただ、チャンピオンシップでは出だしで大差をつけられるとなかなかカムバックするのは難しくなってくると思うので、明日は気を引き締めて戦いたいです。たまたま、自分の3ポイントシュートが入って落ち着いた形になりましたが、セカンドユニットが良い流れを作ってくれました。スタートで出してもらっているので、出だしが悪かったのは責任があります。そこは反省しないといけません」
前田は、4月30日の富山グラウジーズ戦で3ポイントシュート12本中8️本成功の28得点と大暴れだった。2試合続けて確率良く決められた点について、本人も「前よりも迷いなく打てています。だんだん自分の良いリズムをつかめていると思います」と、手応えを得ている。
シュートは水物とは言うが、佐藤ヘッドコーチはここに来ての前田のシュートタッチの良さには確固たる裏付けがあると語る。「徐々に良くなってきた印象です。3月のバイウィーク明けの頃からしっかり足が動く、身体を張れるようになってきました。細かいところで下を向く回数が減り、ちょっとずつ成長して自信をつけてここにきています。あとは、これをどれだけチャンピオンシップにぶつけられるかです」
現在、川崎はチーム1のシューターであるマット・ジャニングが、4月2日の試合を最後に欠場を続けている。試合前のウォーミングアップでは軽快な動きを見せているため、チャンピオンシップ出場の可能性はありそうだが、それでもベストコンディションでないことは間違いない。だからこそ、前田の長距離砲にかかる期待は引き続き大きい。
この状況を前田はプレッシャーとは感じず、「むしろチャンスだと思っています」とポジティブにとらえている。そこにはチームメートへの熱い思いがある。「マットはリハビリしていて、戻ってこられるように本当に頑張っています。誰よりもマットは試合に一番出たいし、悔しいと思うので、その分もという気持ちでプレーしています」
いよいよ1週間後にはチャンピオンシップが始まる。「去年、本当に悔しい思いもしました。今年も故障者が出てタフな状況ですが、チャンピオンシップは何が起こるのか分からないですし、チャンスはあると思います。去年は何もチームの力になれなかったので、今年は力になって優勝したいです」
昨シーズンの宇都宮ブレックスとのセミファイナルで前田は2試合合計で約10分半の出場、2得点と全く爪痕を残せなかった。それでも、現在の前田は「自分の中でやれるなという感覚はあります」と自信に満ちている。
短期決戦になればなるほど勢いは大事で、3ポイントシュートは勢いを生み出す大きなきっかけとなる。だからこそシューターのパフォーマンスはより重要となり、前田が1年間の成長の証をしっかり見せられるかどうかは川崎のチャンピオンシップの行方にも大きな影響を及ぼす。彼こそが川崎のXファクターになるはずだ。