渡邊雄太

初戦が鍵に「ここで勢いに乗れるのか、それとも現実を見せつけられるか」

ワールドカップ2023の組み合わせ抽選会が4月28日に行われ、グループEの日本はオーストラリア、ドイツ、フィンランドと同組となった。初戦は8月25日のドイツで、27日にフィンランド、29日にオーストラリアと対戦する。

現在のFIBA世界ランキング3位で東京五輪3位のオーストラリアは当然として、2022ユーロバスケットで3位のドイツ、同大会で7位のフィンランドも難敵で、日本は全8つのグループリーグの中でも随一の激戦区に入ってしまった。

日本にとって一番の目標はアジア1位となり、パリ五輪への出場権を獲得すること。そのためにもグループリーグ突破を果たしたいところだ。日本代表の大黒柱である渡邊雄太は、すべての試合が重要と言い、特に初戦を意識している。「初戦は絶対に大事になってきます。こういう一発勝負の試合は勢いに乗ってしまえば本当にわからなかったりします。ここで勢いに乗れるのか、それとも現実を見せつけられるかで、残りの試合も変わってくると思います」

ドイツはレイカーズのスコアリングガードであるデニス・シュルーダーが代表のエーススコアラーを長年務めている。そこにマジックの中心選手であるフランツ・バグナー、彼の兄で同じくマジックのモリッツ・バグナーなど若い選手も育っている難敵だ。

もちろん日本は貪欲に勝利を狙いにいくが、渡邊は「大前提として日本が本当に100%の力を発揮してやっと勝負になるくらいの地力の差は間違いなくあります」と冷静に戦力差を分析する。「僕たちがちょっとでも気を抜いたり、スカウティングが頭に入っていなかったりしてゲームプランを一つでも間違えたりしたら、一気に試合は崩れると思います。本当に全員の調子がピークの状態かつ、100%の集中力を継続することでやっと勝負になるんじゃないかくらいの感覚です」

またフィンランド、オーストラリアとの力関係もドイツと同じだが、基本的にワールドカップの出場国の大半は日本より格上だ。それを考えれば、グループリーグがどんな相手になっても、日本の立ち位置ややるべきことは変わらないと渡邊は語る。

「他のグループを見ても日本はランキング的に言うと、絶対に格下にはなってきます。どこと当たっても自分たちの100%を出し切らないと勝てないです。自信がないとかではなく、相手と比べて自分たちの実力不足を現実として受け止めながら、うまくやっていくしかありません」

「若い選手たちにとって、メンターのような存在になれたらと思います」

また、渡邊は年齢的に中堅、ベテランの域に差し掛かかったこともあり、代表のリーダーとして強い自覚を持っている。「16歳、17歳くらいから代表に入れてもらえて、国際試合に出させてもらったり自分はたくさんの経験を積んできました。それをみんなに伝えたり、リーダーシップをしっかり発揮してみんなの支えになっていかなきゃいけない。ちょっと前までは下から数えた方が年齢的に早かったのが、いつの間にか年齢的にも上の立場になってきました。若い選手たちにとって、メンターのような存在になれたらと思います」

NBAという世界最高峰のレベルを知る渡邊だからこそ、オーストラリア、ドイツ、フィンランドに勝つことがいかに難しいミッションなのかを理解している。ただ、同時に世界一過酷なNBAの生存競争を勝ち抜いてきたからこそ、勝負に絶対はなく、自分たちのやるべきことを貫けばチャンスがあることを分かっており、実際に自らの歩みで証明してきた。

「世界の強豪国が相手ですけど、やってみないと本当に分からないです。自分たちが最高のパフォーマンスを出せれば、付け入る隙があるんじゃないかと思っています。もちろん簡単ではないですし、普通にやってしまえば3連敗でグループリーグが終わってしまう。しっかりと一人ひとりが準備をして、作戦や相手の情報も全部頭に叩き込んで、ワールドカップ初戦を最高の状態で臨めればと思っています」

言うまでもなく日本代表が躍進するには、渡邊の存在が不可欠だ。彼がより代表活動に集中できる状況を作るためにも、一刻も早く彼の新シーズンの契約がまとまることを願う。