キャリア3年目の今シーズン途中、ピストンズからホークスへ移籍
サディック・ベイはキャリア3年目の今シーズンを迎える前夜、「プレーオフに出場する選手になる」との誓いを立てた。しかし、彼が所属するピストンズは再建期にあり、開幕から1カ月半が経過した時点でケイド・カニングハムがすねの手術でシーズン全休が決まると、早々に上位進出をあきらめてしまった。
ピストンズが最後にプレーオフに進出したのは2018-19シーズンで、再建は4シーズン目となっていたが、チームに浮上の兆しはなかった。ベイとしては忸怩たる思いがあったに違いない。そこに舞い込んだのが2月の4チーム間トレードで、彼はホークスに移籍することになった。
ウォリアーズとトレイルブレイザーズも絡むトレードは、ゲイリー・ペイトン2世のメディカルチェックに問題があったために破談になるところだった。それでもウォリアーズはトレイルブレイザーズに抗議はしたがトレードは取り消さず、ベイはプレーオフを目指して戦うチャンスを失わずに済んでホッとした。ホークスに来てから半月でヘッドコーチ交代があったが、それも彼には何の問題もなかった。
ベイの役割はディアンドレ・ハンターに続くスモールフォワードの2番手。いずれもトレイ・ヤングとデジャンテ・マレーのためにスペースを広げ、チャンスが回って来たら3ポイントシュートを決めるのが役割で、ベイはハンターに比べてサイズとパワーを供給できる。ボグダン・ボグダノビッチとオニエカ・オコング、ベイのセカンドユニットの得点力は、シーズン後半のホークスの大きな武器となった。
そしてホークスはプレーイン・トーナメントでヒートを破り、ベイは「プレーオフに出場する選手になる」という目標を実現させた。チームはファーストラウンドでセルティックスに敗れたが、6試合すべてに出場したベイにとっては大きなステップアップとなった。
「敗退は残念だけど、個人的にはプレーオフを経験できて本当に良かった。プレーオフならではのアジャストを何度もやって、これまで経験しなかったことを学ぶことができた」とベイは言う。
彼がマッチアップしたのはジェイソン・テイタムでありジェイレン・ブラウン。ハンターよりもフィジカルに守れることでプレータイムが伸び、レギュラーシーズンとは強度が異なるプレーオフで相手のエースと戦うことができた。
「それは実際にプレーしなければ決して得られない学びだった」。その一例として彼はジャッジを挙げた。「これまではプレーオフになると激しく当たってもほとんどファウルを取られないと思っていた。でも実際はそうじゃなく、アジャストが必要だった。それを知らないのと知っているのでは大違いだ。コールの基準を知ってプレーすれば、フィジカルに戦う僕のような選手には有利になる」
ピストンズからホークスに移籍し、環境が変わる中での自分の変化をベイはこう語る。「ハードに戦うメンタルは以前と変わらないけど、チームとしてコートを広く使うポジショニングだったり、相手のポジションにかかわらず守る意識は高くなった。自分らしくプレーするだけじゃなく、チームに必要とされる役割をこなすようになった。トレードが決まった時点で『こういうプレーをしたい』と思っていた通りになっているよ」
NBAキャリア3年目を終えたばかりの24歳は、トレードとプレーオフ出場という経験をバネに、さらに大きく成長するつもりでいる。「オフも忙しくなる。まだ細かい計画を立てたわけじゃないけど、すぐに取り掛かる。コート内外でリーダーになりたいし、もっとプレーの幅を広げたい」
そして、自分に新たなチャンスをくれたホークスとアトランタの人々にもっと馴染みたいと彼は願っている。「オフはここで過ごすつもりだ。レストランにはあちこち行ったけど、文化や遊ぶ場所は全然行ってないから、アトランタの街を知る良い機会になるよ。チャリティーやバスケを教える活動といった地域社会への貢献もやってみたい。ここの人たちは僕を温かく迎え入れてくれた。ただバスケをするだけじゃなく、コートの外でも恩返しがしたい。自分にできる限り、街を助けられるよう努めたいんだ」