個々のマッチアップではサンズに分があるも、プレーを限定させてミスを誘う
ナゲッツとサンズの対戦になった西カンファレンスセミファイナル、ゲームプランのハマったナゲッツが第1戦を制しました。二コラ・ヨキッチがゴール下をポロポロと落とす乱調でしたが、プレーオフに強いジャマール・マレーの34得点に加え、アウトサイドでマークが緩かったアーロン・ゴードンが3ポイントシュート3本を含む23得点で、チームとして125得点を奪う快勝でした。しかし、ハイスコアよりも重要だったのはサンズ対策として準備されたディフェンスでした。
ケビン・デュラントがフィールドゴール19本中12本を決めて29得点、デビン・ブッカーは19本中10本で27得点とサンズが誇る2大エースは1on1の強さを見せ付け、さらにインサイドで合わせたディアンドレ・エイトンも11本中7本成功の14得点で、サンズはフィールドゴールを51%と高確率で決めました。ナゲッツのディフェンダーにサンズの強烈な個人技アタックを止めるのは難しく、加えてブロックはガベージタイムの1だけとリムプロテクトも機能しませんでした。つまり、個々のマッチアップではサンズの強さが目立ったのです。
しかし、ナゲッツは14ものスティールを記録し、サンズのターンオーバーから18得点を奪いました。特に目立ったのは8つのパスカットで、サンズのパスコースを読み切り、トランジションに持ち込んでリードを奪いました。個人のマッチアップでは止めきれなくても、プレーを限定させることでサンズのミスを誘ったチームディフェンスは極めて効果的でした。
高確率で決めたデュラントとブッカーですが、ナゲッツは2人合わせて4本しか3ポイントシュートを打たせていません。これはマークマンが積極的にプレッシャーを掛けて打たせないことに加え、スクリーンがあればショウディフェンスや早めのスイッチによる対処でフリーにさせず、ドライブやパスを促す守り方を徹底しました。この時にはヨキッチが外へ引き出されますが、周囲の選手がすかさずローテーションしてエイトンへのパスコースへと飛び出て、何度もパスカットに成功しています。
ドライブに対してはできるだけサイドラインに膨らむコースを選択させ、ボールサイドに人数を掛けやすくする工夫が見られました。ボールに近い選手はヘルプ担当としてドライブを防ぎ、遠い選手はパスが出た瞬間にローテーションとオフボールスイッチを行い、流れるようなディフェンスの連携でサンズのボールムーブを止めました。
ただし、いくら連携が良くともすべての選手を追いきるわけにはいきません。そこでクリス・ポールには緩めのマークにしておき、オープンショットを許容しました。ポールはチーム最多の3ポイントシュート5本を打ちましたが成功は1本だけで、ブッカーとデュラントに徹底して打たせなかったナゲッツの策が見事にハマりました。
動きの遅いヨキッチの問題もあり、ナゲッツはディフェンスの悪いチームと思われがちですが、オフボールでのマークの受け渡しやカバーリングは整備されており、個人ではなくチームとして守る能力は非常に高いものがあります。第1戦ではルーキーのクリスチャン・ブラウンが4スティールを記録するなど、若い選手にもディフェンスのカルチャーを染み込ませています。ブッカーとデュラントの脅威に苦しみながらも、チームディフェンスで上回っての快勝でした。
一方でサンズもエイトンへのパスコースが読まれたと見て、後半にはコーナーに置いたシューターへと展開する形を増やし、ナゲッツディフェンスの逆を取るシーンが出てきました。また、クリス・ポールはシューターとしての弱みに付け込まれましたが、自らがハンドラーとしてパスを出す立場になればブッカーやデュラントのシュート能力が生きるだけでなく、ミスの少ないスタイルはナゲッツのカウンターを封じることにも繋がります。第2戦での修正に何を選ぶかが注目されます。