「JBA、Bリーグの改革は『グッドガバナンス』の一言」
日本バスケットボール界はFIBA(国際バスケットボール連盟)からガバナンスの不備を指摘され、その改革のためにタスクフォースが立ち上げられた。JBA(日本バスケットボール協会)は組織としてまともに機能していない状態を改善すべく、『バスケ界の外』から川淵三郎を始めとするリーダーを入れて改革を実施。FIBAから長らく求められてきたが何も進まなかった2つのリーグの統合させてBリーグを生み出しただけでなく、組織として全面的な刷新が行われた。
FIBAもパトリック・バウマン事務総長が中心となり、日本バスケ界の立て直しに助力を惜しまなかった。精力的に働いてきたバウマン事務総長が今年10月に心臓発作で亡くなる悲しい出来事があったが、FIBAタスクフォースのコーチェアマンであるインゴ・ヴァイスとスコット・ダーヴィンの2人が来日。バスケ界の改革、向上がいかに進んでいるかの報告を受け、今日夕方に川淵とともに会見を行った。
立ち上げからタスクフォースにかかわってきたインゴ・ヴァイスによれば、2015年1月の立ち上げから数えて、これで9回目の来日。日本バスケとJBAの発展、オリンピックの準備がどのように進んでいるかを約4年間にわたり確認してきた。
そのヴァイスは日本バスケ界の取り組みを高く評価する。「今日の報告を受け、実際に目にしてきたことも含め、FIBAの意向に沿うものだと言える。JBA、Bリーグがこれまで行ってきた改革は『グッドガバナンス』の一言。FIBAセントラルボードでも成功例として日本の話が挙がる。FIBAとしても、この数年間の日本バスケットボールの発展、その努力に感謝を申し上げたい」
「真摯に会話をするためテーブルに戻るよう伝えたい」
また、一部週刊誌で報じられた三屋裕子会長を始めとするJBAの役員に対する誹謗中傷記事に対し、川淵は厳しい口調で非難した。「私にとって驚くことがありました。日本バスケットボール推進協議会たるものがFIBAに対してバスケ界の問題を調査してほしいという要望を出した。読んでみたら嘆かわしい、現状とはかけ離れたもの。FIBAのタスクフォースができるような混乱を引き起こした反省もなく、よくこんなことを言えるなと」
外部団体による一方的な告発は取り合わないのが大人の対応かもしれない。だが先日、JBAは週刊新潮(新潮社)に不適切な取材依頼、事実や法律を誤認ないし無視した掲載内容があったとして厳重抗議しており、ここであらためて明確な否定が行われた。
そして、FIBAの両氏もこれに同調する。ヴァイスは言う。「日本バスケットボール推進協議会からもらったレターの中身について、私は愕然としている。まず私は彼らに対し、この場を借りて公式に、JBAとBリーグと真摯に会話をするためテーブルに戻るよう伝えたい。もしそのように、テーブルに着く気がないのであれば、明日ではなく今日、日本のバスケットボール界から引退していただきたい」
その口調は極めて厳しく、「日本のバスケットボール界の墓堀り役」という表現も飛び出した。「川淵さんは高齢だが、バスケットボールの発展について語ると40代の発想で話をしてくれた。ところが彼らの頭の中身は120歳。モントリオール五輪(1976年)や東京五輪(1964年)で止まっている」
タスクフォース立ち上げの時点で推進協議会のメンバーと会っていたこともヴァイスは明かす。「その経験から何かの手助けをしてもらえるのではないかと思った。私とバウマンは彼らと議論して、改革のための提案がないかと求めたが、何も出てこなかった。彼らの話で何度も出てきたのは、新しいJBAで何かしらの役職に就きたいということ。まずは改革を進めること、2リーグの問題を解決するのが先だと話すと、彼らは何も言わなくなってしまった」(川淵の心臓に悪いからこれまで黙っていたんだ、というジョークとともに)
日本バスケ界の問題を精査してほしいと要望するレターをFIBAに出した推進協議会について、ダーヴィンはこう語る。「レターを読んでも、根拠やデータがないので対応できない。顔を合わせて詳細を聞き、対応を考えたいと呼びかけたが、ヴァイスはドイツから、私はオーストラリアから来日しているにもかかわらず、会う時間を作ってもらえなかった」
「5人制と3人制の会場が五輪のホットスポットに」
推進協議会に対しては厳しい言葉が飛び出したが、両氏はそれ以外の話題には笑顔とジョークを織り交ぜて会見を進めた。質疑応答にも丁寧に対応し、集まった取材陣から、2020年の東京オリンピックに向けた『開催国枠』での出場が認められるかどうかを問われると、ヴァイスは「その質問を待っていたんだ。スポーツの話がしたかった」と身を乗り出す。
ヴァイスの説明によれば、2019年3月末にコートジボワールで行われるFIBAのセントラルボード(役員会)で、男女、5人制と3人制のそれぞれ個別に決定が行われる。ヴァイスは個人的な意見だと前置きした上で、こう話した。「今回のモニタリングの感触は今の日本のバスケットボールの発展に非常に満足したことは伝わったかと思う」
「日本開催のオリンピックに日本が出場するのは、日本バスケットボール界にとってはまたとない機会。5人制と3人制の会場(5人制はさいたまスーパーアリーナ、3人制は青海アーバンスポーツパーク)が、五輪のホットスポットになると期待しています」