広瀬健太

文=丸山素行 写真=幡原裕治、B.LEAGUE

会心の一撃で喜び爆発「恥ずかしかった(笑)」

サンロッカーズ渋谷は三遠ネオフェニックスとのゲーム1に93-85で勝利した。

勝利を決定付けたのは、この日33得点を挙げたライアン・ケリーでもなく、後半だけで21得点を挙げたロバート・サクレでもなく、ベテランの広瀬健太だった。

最終クォーター残り1分25秒、6点リードの場面で、広瀬はファウルを誘発し、フリースローを2本成功させた。直後にジョシュ・チルドレスのダンクを浴びるも、再び広瀬が3ポイントシュートを沈めた。三遠の望みを断ち切るビッグプレーだった。

普段はあまり感情を表に出さない広瀬が、飛び跳ねてケリーとハイタッチし、笑顔でベンチに戻っていった。「3ポイントを練習してたのでうれしかったです。気持ち良かったので」と広瀬はそのシーンを振り返る。珍しく感情を爆発させたシーンだったが、試合後に冷静になると「ちょっと恥ずかしかった(笑)」と照れ笑いを浮かべた。

昨日の試合は互いに流れが行き来する展開となった。SR渋谷は第3クォーターにトランジションから流れをつかみ、一時は8点のリードを奪ったが、その後はイージーシュートを外して突き放すチャンスを逸し、最終的に第3クォーターを3点のビハインドで終えた。

「自分たちに流れが来ると思ったんですけど、追い付かれてしまった。自分たちの流れが来たと思ったら、そこで10点、20点と広げてゲームを決めてくるというのが本当に強いチーム。まだまだ自分たちはそのレベルではない」と広瀬は言う。

強豪のように一気にたたみかける力がないと課題に目を向けた広瀬だが、その一方で、劣勢に立たされた時でも崩れないタフさを収穫に挙げた。「離されたところでズルズルいくのではなく、コーチの指示やタイムアウトを取らなくても、ディフェンスでしっかり守って得点に繋げて、自分たちで立て直しました。自分たちで戻すという強さを今日は出せたと思います」

SR渋谷を指揮する伊佐勉ヘッドコーチも「一瞬離されかけた時に、タイムアウトを使わずに選手が修正してくれたというのはチームにとって大きい」と語った。

広瀬健太

「激戦区なので、貯金があっても上位にはいけない」

今シーズンのSR渋谷は、スタートダッシュに失敗した。ブザービーターで敗れた試合もあり、ここまで敗れた12試合中7試合が5点差以内での敗戦だ。その中でヘッドコーチの交代劇もあった。今回のようにコート上の選手たちだけで試合を立て直すことができたのは、これまで培ってきた経験が大きいという。

「今シーズン出だしのところで良いゲームをしながらも勝ち切れない試合が続きました。そこから連勝して、接戦をモノにしたり自分たちのペースではない試合も勝った中で、勝ち癖というか、勝利への意欲が強くなってきているとは思います」

昨日の勝利で通算成績を11勝12敗とし、SR渋谷は勝率5割復帰まであと一歩のところまできた。それでも「東地区は激戦区なので、貯金があっても上位にはいけない」と広瀬が言うように、3位アルバルク東京とのゲーム差は4と依然開きがある。

だからこそ、目の前の試合を一つずつ乗り越えていくしかない。油断や慢心は調子が良い時にこそやって来る。それでもシーズンはまだ長い。「取りこぼしはないように、でもチャレンジャー精神でやっていきたい」という広瀬の姿勢があれば、必ず道は開けるはずだ。