ジャマール・マレー

3年ぶりのプレーオフ「あの時の僕は今の僕じゃない」

ナゲッツがホームでティンバーウルブズを122-113で撃破し、プレーオフでの2連勝スタートを切った。一番のスタッツを残したのは40得点のジャマール・マレーで、一瞬のインパクトで最も大きかったのは第4クォーターのマイケル・ポーターJr.で、ニコラ・ヨキッチは27得点9リバウンド9アシストとMVP級のパフォーマンスを見せたが、それでもチームで3番目の選手。それほど今のナゲッツは調子が良い。

前半は楽勝ムードだったが、第3クォーターに23-40と失速。レギュラーシーズン終盤にもしばしば見られたように、余裕の展開でリラックスしすぎてしまい、猛烈に追い上げられたことにフラストレーションを溜めて集中を切らしてしまう悪癖がここでも出た。しかし、第3クォーターに一度は逆転された後に息を吹き返し、ポーターJr.の爆発でウルブズを突き放し、最後は総合力でねじ伏せた。

レギュラーシーズン中は選手たちの気の緩みに毎回激怒していた指揮官マイケル・マローンも、今回は「ウチには長く一緒にプレーしている選手が多いので、相手のミスから速攻に転じた時は即興のプレーが上手く決まる。しかし、相手に流れがある時は組織立ったプレーが必要だ」という小言だけで、あとは自分たちで立ち直り、ウルブズのインテンシティの高さに負けずに勝ちきった選手たちを称えた。

マレーはフィールドゴール22本中13本成功、うち3ポイントシュート6本を決めての40得点。2019-20シーズンの『バブル』でのプレーオフで驚異的な得点能力を発揮した彼は、翌シーズンに膝の十字靭帯断裂の大ケガを負い、昨シーズンも全休した。今シーズン開幕とともに復帰し、1年がかりで調子を上げてきて、ようやくプレーオフの舞台に戻って来た。

試合後の会見でマレーはこう語る。「プレーオフは久しぶりだ。長い間感じていなかったプレーオフの興奮を取り戻せたのは、僕にとってはすごく意味のあることなんだ。感情が高ぶりすぎると試合序盤に噛み合わないことがあって、前回の試合はそうだったけど、今日は不思議とリラックスして試合に入れた」

勝敗の決した残り11秒、指揮官マローンはマレーだけをベンチに下げた。デンバーのファンがマレーにスタンディングオベーションを送る機会を作るためだ。最初にマレーを抱きしめたマローンはその後、スタンドに向かって「もっともっと」と歓声を要求した。

「観客が盛り上げてくれるのはありがたいよ。一つひとつのプレーに熱中して、試合に入り込んでいるのが伝わってくる。だから僕らも熱気に包まれて、いくらでもエネルギーが沸いてくるんだ」とマレーは言う。「プレーオフの激しさから何年か遠ざかっていたから、感覚を取り戻しながらプレーするのは大変で疲れ果てていたけど、それを乗り越えてプレーできるのは良いことだよ」

それでも、『バブル』の時と比べると? という質問には「そういう見方にはうんざりなんだ」と率直な思いを口にする。

「あの時の僕は今の僕じゃない。みんなは過去を振り返って比較するけど、僕がそれをやっていたらいつまでたっても過去の自分を超えられない。だから『バブル』は始まりだっただけなんだ。僕はまだ26歳で、まだまだこの先のキャリアがある。もっと練習して上達し続けたいんだ」

マレーの得点能力、特にディフェンスが強調されて得点が伸びないプレーオフでも遺憾なく発揮される爆発力は、ナゲッツの大きな武器になる。マレーは自分の得点でチームを引っ張るつもりでいるが、それと同時に勝利はチームで勝ち取るものであることを忘れてはいない。

「僕が最高のプレーができる時は、チームメートと楽しみながら一生懸命にプレーし、接戦を繰り広げる時だ。マイク(ポーターJr.)もすごかったよね。アーロン(ゴードン)はファウルをすべて使ってチームに貢献した。僕の出来は『まあまあ』だったかな。でも、ナゲッツとしては素晴らしいゲームができたよ」

「プレーオフは2年連続でただ見ていただけで、チームの助けになれなかった。でも今は健康だから、チャンスを最大限に生かしたい。次は敵地での試合だし、相手は死に物狂いで向かって来るだろうけど、僕らは楽しんで戦う。明日からまた新しい気持ち、新しいメンタリティで次の戦いに臨むよ」