タイラー・ヒーロー

「カンファレンスファイナルには間に合わなくても、NBAファイナルなら」

ヒートはレギュラーシーズンで44勝38敗、プレーイン・トーナメントを勝ち上がって第8シードでプレーオフに臨み、58勝を挙げた第1シードのバックスに挑戦する。それでも現地4月16日に行われた第1戦では、終始リードを保って敵地での貴重な1勝を挙げた。

プレーオフ初戦から両チームの主力にケガが出る試合でもあった。ヤニス・アデトクンボがドライブからのシュートを狙った際に、止めに入ったケビン・ラブと衝突。空中でバランスを崩して腰からフロアに落ち、痛みに悶絶した。彼はその後に一度コートに戻ってプレーを続けようとしたものの、すぐに無理だと判断して、わずか11分のプレーに留まった。全能のエースをアクシデントで欠いたことが、バックスの力を大きく削いだのは間違いない。

アデトクンボは腰の打撲で、痛みが引かずに現地18日のチーム練習に参加できなかった。指揮官のマイク・ブーデンフォルツァーは「ヤニスがどう感じるか次第だ。治療を受けて、痛みが引いてくれればいい。ただ我々は楽観視しているよ」と言う。骨折など大きなケガではなかったのは不幸中の幸いで、それが楽観視の理由だろうが、現地19日に行われる第2戦もアデトクンボ抜きの戦いを強いられ、ホームゲームを2つ落とすことになれば、状況は非常に厳しくなる。ヒートのプレーオフでの勝負強さは折り紙付きで、第1シードで当たることは不運でしかない。

そのヒートも、タイラー・ヒーローを失った。第2クォーター後半のディフェンスの場面、彼が前からプレッシャーを掛けて相手選手のファンブルを誘発し、そのこぼれ球を追ってフロアにダイブした際に右手首を骨折した。彼は手首の異常を感じながらもしばらくプレーを続け、バム・アデバヨからのキックアウトを受けて右コーナーからの3ポイントシュートを決めてもいる。

手首の骨折でシーズン終了かと思われたが、彼は復帰をあきらめていない。現地18日のチーム練習にギプスを着けて顔を出したヒーローは取材に応じ「プレーオフに出場するために1年間ずっと頑張ってきたのに、いきなりケガなんて精神的にキツい。まだ信じられない気分だ。本当にタイミングが悪かった」と話す。

「映像を見ても、どうやって骨折したのか分からない。ダイブすべきじゃなかったのかもしれない。でも、ルーズボールに10回飛び込んでも骨折なんてしないはずだ。プレーオフの初戦だし、自分の故郷でのゲームということもあって、僕はエネルギーを生み出そうとしていた」

彼はそれまで骨折を経験したことがなく、ケガをした当初は痛みはあっても何が起こったかが分からなかったと言う。「痛みはあったけど、シーズンで一番ぐらいのオープンショットのチャンスが来たから迷わずに打った。その瞬間、フォロースルーさえできなくて『これはマズい』と思った」

それでも彼は、マイアミに戻ったらすぐに手術を受けて復帰を目指すと語る。「回復までに4週間から6週間。カンファレンスファイナルには間に合わなくても、NBAファイナルなら、と思っている。6月1日に始まるファイナルまでチームが勝ち進み、そこで復帰できることを願う。だから金曜に手術を受け、一日一日を大切にして進んでいくよ」

キャリア4年目を迎えたヒーローは、優れたシューターであるだけでなくプレーメーカーとしての成長も見せ、ヒートのオフェンスで重要な役割を担っていた。プレーオフ初戦で彼を失ったのは大きな痛手だが、復帰に向けて懸命のリハビリに取り組む彼の姿が、チームにさらなるモチベーションを与えるのは間違いない。

第1シードと第8シードの対戦ではあるが、バックスvsヒートはどちらに転ぶか分からないシリーズとなった。