ディアロン・フォックス

17年ぶりのプレーオフ、ステフィン・カリー不在の時間帯に勝利を呼び込む

キングスは17年ぶりにプレーオフ進出を果たした。サクラメントのファンは試合開始前から大いに盛り上がっていたが、48勝を挙げて西カンファレンス3位へと躍進した若いチームはいまだ勝利に飢えており、冷静に、そして臆することなくこのティップオフの瞬間を迎えた。

点差の離れない接戦が試合を通して続いた。キングスを率いるマイク・ブラウンは9人から10人のローテーションで戦うと事前に語っていたが、その通りに第1クォーターから9人の選手を次々にコートに送り出す。経験豊富なウォリアーズに食らい付けたのは、そのセカンドユニットの働きが大きい。

マリーク・モンクはディアロン・フォックスに次ぐ32得点、トレイ・ライルズはウォリアーズに傾きつつある流れを引き戻す16得点を記録し、ウォリアーズのセカンドユニットを上回った。ディフェンスが売りのデイビオン・ミッチェルは出場した22分間でステフィン・カリーを始めとするウォリアーズのシューター陣に強烈なプレッシャーを掛けた。そしてシーズン終盤にローテーションに加わったアレックス・レンは、13分という短いプレータイムの中で7リバウンドにド派手なダンクシュート、ドレイモンド・グリーンに対するブロックショットなどインパクトを残し、チームを勢い付けた。

ウォリアーズはカリーを休ませる時間帯に問題を抱えていた。第3クォーター残り2分18秒でカリーをベンチに下げた時点で86-78とリードしていたが、第3クォーター終了までに13-4のランを浴びて逆転された。カリーがコートに立っている間の得失点差は+11で、これは両チームのどの選手よりも良い数字。しかし、カリー不在の時間帯はキングスにいいようにやられてしまった。

それでもウォリアーズは『王朝』を築いたチームであり、プレーオフの戦い方を熟知している。リードチェンジを繰り返す攻防を経ても、クラッチタイムになればカリーを始めとするスター選手たちが経験にモノを言わせ、流れを一気に持っていくかと思われた。しかし、キングスのエース、ディアロン・フォックスがそれをねじ伏せた。

勝負どころのオフェンスはほとんどフォックスが起点となり、巧みなボールコントロールでウォリアーズの守備に綻びを作り出し、良いシュートチャンスを作り出していった。そして彼自身も、終盤のフリースローの確率こそ悪かったが試合を通じてゲームハイの38得点を記録している。

フォックスは言う。「僕にとっては初めてのプレーオフの試合で、みんなが言うフィジカルの違いがどれだけあるのかずっと知りたかったんだ。前半はそれに慣れるのに少し時間が必要だったけど、後半にはリズムがつかめた。チームメートたちが上手くお膳立てをしてくれたから、僕は彼らにうながされるままにプレーするだけで良かった」

レギュラーシーズンを通してキングスはクラッチタイムに強さを発揮してきた。百戦錬磨のウォリアーズに臆するのではなく、自分たちのバスケを信じたことが勝利の最大の要因となった。「ウチはクラッチタイムのプレーに自信がある。だから僕も信じて攻めてアタックしたんだ」

そう語るフォックスは、ホームアリーナのゴールデン1センターの雰囲気も勝因の一つだと付け加えることを忘れなかった。「サクラメントの本領発揮だったね。みんなこのチームが良い時も悪い時も、本当にダメな時も支えてくれる。それを僕たちは知っているんだ」