デマー・デローザン

OG・アヌノビーにマークされたデローザンの『逆アイソレーション』

ラプターズとブルズの対戦になったプレーイン・トーナメントは、試合を優位に進めたラプターズが最大19点のリードを奪いながら、36本中18本ものフリースローミスを重ね、最後も決まれば同点のフリースローを外して敗れました。そのラプターズのフリースロー時に大声で叫び、ミスを促したデマー・デローザンの愛娘が勝利の立役者として注目を集めました。

一方でその父親、ブルズの絶対的エースであるデローザンの仕事は『目立たないこと』でした。ブルズのオフェンスのほとんどがデローザンのアタックから始まる印象さえありますが、シーズン中の対戦ではマッチアップ相手のOG・アヌノビーに完璧に抑え込まれてきました。

それだけに、この試合もラプターズが優位と予想されましたが、試合開始からデローザンはボールから離れる動きを繰り返し、ディフェンス力の高いアヌノビーをディフェンスに参加させない作戦を実行しました。

ドラフト時のアヌノビーは、カワイ・レナードとも比較されましたが、当時レナードのディフェンス対策として、ディフェンス力の高いレナードにマークされた相手エースがオフェンスに参加しない逆アイソレーション、通称『カワイソレーション』という作戦が行われていました。それが時を経て、リーグのベストディフェンダーに成長したアヌノビーが、言わば『アヌソレーション』をされた形です。

このオフェンスは確かに有効で、アヌノビーのディフェンスを避けたことでラプターズはスティールが生まれず、シーズンではリーグ3位の17.8だった速攻の得点が、この試合は8点のみでした。デローザンがスペースを広く保ち、ザック・ラビーン中心に攻めていく形は、最終的にラビーンがゲームハイの39得点を奪うことに繋がっています。

ラプターズはデローザンに合わせてアヌノビーを交代させており、徹底してデローザンを封じ込める作戦でした。『アヌソレーション』で肩透かしを食らったものの、それでもデローザンを止めていることに違いはありませんでしたが、第3クォーターにファウルトラブルもあってデローザンがベンチに下がると、アヌノビーもベンチに下がり、そこからブルズの怒涛の追い上げが始まったのですから、これも『アヌソレーション』が正しい作戦だったことを示しています。

通常は「相手エースをどうやって止めるか」がキーになるところですが、「エースキラーをどうやって消すか」がテーマになった珍しい試合でした。一発勝負の試合で、この作戦を採用したブルズの勇気は称賛に値しますが、それだけアヌノビーが怖い相手だったということです。

そして、デローザンはアヌノビーにマークされていない時に上手く得点を重ねながら、試合終盤には真っ向から勝負を挑み得点を奪うなど、フィールドゴール53%で23得点を奪っています。重要な試合で我慢に我慢を強いられたものの、最後はデローザンらしいフィニッシュでもありました。